世界情勢の変化でロ調の“反西側連帯”が深化

「現在の北朝鮮の孤立の決定的契機になったのは2017年9月の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射に対し、同年12月に国連安保理が採択した決議です。

国連加盟国は、石油製品の北朝鮮への輸出を大幅に制限したうえ、北朝鮮の主力輸出品だった海産物や石炭を買い入れることをやめました。これにより北朝鮮は外貨獲得の柱を失い、一時はエネルギー確保もおぼつかなくなりました。

安保理の常任理事国である中国とロシアがこの決議に対し拒否権を行使していれば採択されなかったのに、両国はそれをしなかった。そのため金正恩氏は当時、中ロの仕打ちに激怒していました。

中ロとしては、北朝鮮が核実験やICBM発射を繰り返すことは地域の緊張を高めるので困ったな、と思っていた他に、当時は米国と仲よくやりたいという思惑があり、決議を通すことを黙認したんです」(日朝関係筋)

プーチン氏が宿泊する錦繍山(クムスサン)迎賓館を案内する金正恩氏(朝鮮中央テレビより)
プーチン氏が宿泊する錦繍山(クムスサン)迎賓館を案内する金正恩氏(朝鮮中央テレビより)

ところがその後、世界情勢は激変。中国と米国が貿易や台湾問題でぶつかり始め、2022年2月にはロシアがウクライナに侵攻し、西側と完全に敵対するようになった。

「じつはロシアの侵攻よりずっと前から中国やロシアと北朝鮮との間では、密貿易や国連制裁の網をくぐる脱法的な方法で石油や石炭、水産物の取引が行われてきました。中ロにとって、北朝鮮体制の弱体化は地域の不安定要因になるため避けなければならなかったのです。

さらにロシアはウクライナ侵攻を始めた後、こうした密貿易を隠そうともしなくなりました。砲弾の生産が息切れし始めた昨年春ごろから、北朝鮮がロシアに砲弾の供給を始めたことで、両国の“反西側連帯”は一挙に深化しました。

北朝鮮の武器・弾薬を輸入することははるか以前から安保理決議が禁じており、ロシアはこれに踏み切ることで、安保理決議は守らない、と公言したことになります。常任理事国なのに、ですよ」(外報部デスク)