全国のヤミ金を支える「センター」と呼ばれる情報屋の存在
そして、そんな五菱会が構築した集金システムを支えていたのが、ターゲットとする債務者の借り入れ状況などの個人情報を集約する「センター」と呼ばれる情報網だ。
関係者によると、今回、警視庁が摘発した事件で逮捕された男が頼りにしたのも、この情報網だったとされる。
男は、調べに「センターから顧客名簿を提供され、事務所の建物も紹介された」と供述。この「センター」から顧客名簿を入手したほか、ヤミ金融を開業する際に入居した事務所についても紹介を受けていたとされる。
実は、この「センター」なる情報網は、五菱会事件が弾けた後も生きながらえてきたのだという。ヤミ金業界にコネクションを持つ、ある暴力団関係者がこう解説する。
「警察が『センター』と呼んでいるのは、五菱会が使っていた、いわゆる情報屋のことだ。今回はパクられた業者のほうに『元五菱会』というキャッチーな肩書きがあったために派手に報道されたわけだが、取引相手はこの業者に限らない。
センターはいまも全国にヤミ金業者へのネットワークがあり、彼らの商売を影で支える役目を果たしているよ」
特定の業者と契約、アシがつかないようにトバシの携帯で…
五菱会をめぐっては、彼らが確立した手口が、いまも被害が絶えない振り込め詐欺などの「特殊詐欺」の源流になったとの指摘もある。
特殊詐欺グループが、摘発のリスクを避けるために、ターゲットに詐欺電話をかける「かけ子」や詐取金を受け取る「受け子」など、役割ごとに犯罪行為を分業するスタイルを採り始めたのも、五菱会の手口の模倣ともいわれる。「センター」もそうした五菱会の〝負の遺産〟のひとつだというのだ。
「ヤミ金業者が相手にするのは、消費者金融など正規の業者から借り入れができなくなった多重債務者たち。そうした債務者の情報を長年にわたってコツコツ集め続けているのが、センター(情報屋)たちだ。
彼らのシノギの材料は、あくまで情報で、(ヤミ金業者が対象となりやすい)貸金業法違反という違法行為に直接加わることはない。
ただ、今回のように事件が捲れたら、共犯としてパクられるリスクもある。だから、オレの知っているセンター(情報屋)は、不特定の人間と情報の売り買いをすることはない。
そいつは、ヤミ金全盛期の90年代後半からシノギを始めて、事務所も構えずにずっとフリーでやってきている。年は40代。サブスクじゃないけど、特定の業者と契約を結んで、その業者の面倒を見て食ってるというわけ。
彼は用心深くて、業者とは互いに架空名義で契約したトバシの携帯を使ってアシがつかないように気をつけているって話だよ」(同前)