オーディション審査員は脂ぎったおっさん一人

当然、半年間を待たずに逃げ出す女性もいるけど──それをランナウェイというらしい──ほとんどの女性は半年間、がんばってお金を貯め、それから帰国して、貧しい暮らしをする両親のために豪邸をドカンと建てる。しばらく気楽な時間を過ごし、結婚して子どもを儲け、育児が落ち着いたら、多くの女性が「もう一回、日本に行って稼ぎたい」と言い出すらしい。

そのときに人間ってすごいなって思いましたね。最初は嫌でも、大金が転がり込むとそんなに変わっちゃうんだって。もちろん、「騙された!」って嫌がる女性もいるんでしょうけど、多くは二度目や三度目の日本をめざすんですからね。

それに、親父の家でオーディションみたいなことをやったときもすごいんです。たとえていうと、むかしテレビ番組であった「スター誕生」みたいな感じ。

水着を着て踊る女性 写真/Shutterstock.
水着を着て踊る女性 写真/Shutterstock.
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まぁ、審査員はだいたいフィリピンパブオーナーの脂ぎったおっさん一人なんですけどね。そのおっさんの前で、フィリピン女性が「これでもか!」っていうぐらいアピールをするワケです、露出度の高い水着を着てね。そりゃ、露骨な行為はしませんが、それに近いことはやる。

でも、彼女たちにとって、日本はなんとしてでも行きたい国になっていたんでしょうね。

で、タカログ語で「タタイ」(お父さん)と呼ばれていた親父は、「ダイスケ、わかった? いわばぼくは、『幸せ配達人』なんだよね」なんて、とぼけてやがる。


文/近藤令

底辺漫画家 超ヤバ実話
近藤 令
底辺漫画家 超ヤバ実話
2024年4月20日
1500円+税
256ページ
ISBN: 978-4-86590-172-6
フィリピンパブ生まれ親父は人買いブローカー。ちばてつや賞2回受賞!累計年収2億円超え!?なのに落ちぶれ、カネ借りまくり、結婚しまくり、喧嘩しまくり。月収14万の底辺マンガ家53歳。あなたは、出稼ぎフィリピン女性にお金を借りたことがありますか?涙が出ますよ、嬉し涙じゃなくて、悔し涙ですけどね。(作者より)抱腹絶倒!艱難辛苦!空腹卒倒!四面楚歌!ホントにあった漫画家のハナシ。
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