GDPの3割が崩壊し、中国経済は大失速

今後、不動産バブル崩壊の影響はどのように広がっていくだろうか。

あらためて不動産バブルの原因とプロセスをみてみよう。富裕層は投資目的で不動産を購入し、不動産バブルに拍車をかけた。

だが、習主席の呼びかけと3年間のコロナ禍によって、不動産の需給バランスは大きく崩れてしまった。

バブルが終息する条件は、供給が需要に見合うレベルにまで下がって需給がリバランスすることである。中国不動産市場の需給関係をみると、今のところ、サプライサイドの調整より需要の萎縮が速いため、リバランスするのに予想以上に時間がかかると推測される。

不動産バブル崩壊がマクロ経済に与える影響としては、中国の経済成長率を一段と押し下げる恐れがある。中国の不動産業は、建設業のほか、広く捉えれば建材や家具などを含めて、GDPの3割を占めるといわれている。要するに、不動産バブルの崩壊は、経済成長を牽引するエンジンが弱まることを意味する。

また、不動産バブルの崩壊は間違いなく、市中銀行(そのほとんどは国有銀行だが)に飛び火する。デベロッパーはすでに債務返済を延滞している。

マンションを購入した個人の一部も住宅ローンの返済を延滞している。結果的に市中銀行のバランスシートに巨額の不良債権が現れると予想される。

地方政府も影響を免れることはできない。中国の地方政府は地方債などを起債して、巨額の債務を抱えている。

とくに地方政府は銀行から融資を受けやすいように、「融資平台」と呼ばれる投資会社をたくさん設立している。これらの投資会社は政府保証あるいはサポーティングレターを手に、国有銀行から巨額の融資を受けている。

この融資を最終的に返済する義務があるのは間違いなく地方政府である。土地財政が崩壊していない局面においては、地方政府はなんとか切り盛りができていた。経済が順調に成長している局面においては、地方政府に対するガバナンスが機能せず、彼らは貴重な財源を好き勝手に無駄遣いしていた。

中国の市役所や区役所はアメリカの議会議事堂と同じぐらい大規模なものが多い。これらの役所の建設費と修繕維持費はいずれも地方財政にとって重い負担になっている。土地財政が崩壊してしまえばあっという間に危機に陥る。

繰り返しになるが、中国の年金などの社会保障基金は各々の市政府が所管している。地方財政が破綻状態に陥れば、年金ファンドも資金が枯渇してしまう恐れがある。

中国GDPの3割崩壊へ「年金ファンドも資金が枯渇してしまう恐れ」これから始まる本当の地獄に中国国民は耐えられるのか_3
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こうして全体を俯瞰すると、中国政府は不動産バブル崩壊に迅速に対処しなければならないことが分かる。問題は、どのように対処するかである。このまま状況を放置すれば、不動産バブルの崩壊は不動産業に限らず、金融、行政、さらに共産党の統治体制を脅かす心配がある。


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中国不動産バブル
柯隆
中国不動産バブル
2024/4/19
1,100円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4166614523

中国の不動産バブル崩壊が幕を開けた。
それは貨幣的な現象に留まらず、金融、行政、政治システムへと飛び火し、やがては共産党統治体制をひっくり返す要因にもなり得る――。バブル形成から崩壊まで、複雑怪奇な構造をどこよりも分かりやすく読み解く。

【不動産から見える中国社会の歪み】

●主要大都市の不動産価格が大きく下落
●開発途上の不動産プロジェクトが次々とゴーストタウンに
●中国政府が不動産開発を熱心に進めた理由
●共産党幹部とデベロッパーが熱中したマネーゲーム
●別荘にプライベートジェット……賄賂を使って贅沢三昧
●地方政府が財政危機に陥れば、年金難民が発生する
●海外へと脱出する日本人が急増
●賃貸市場を敬遠し、マイホームを重視
●「見栄を張る」ことをやめられない
●統制か自由化か、岐路に立つ習近平政権

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