航空業界を悩ませる「2030年問題」

航空業界は今、近い将来に深刻なパイロット不足が発生するという「2030年問題」に危機感を募らせている。

もし旅客機のパイロットが不足すると、旅客機の減便に発展する可能性がある。需要と供給のバランスが崩れ、利用者は予約を取りにくくなるだろう。その結果、旅行や出張の予定などをスムーズに立てられず、大きなストレスを抱えることになるかもしれない。

パイロット不足の原因は多岐に渡る。国土交通省が発表した資料によれば、世界的な航空需要の増大に伴い、2030年には全世界で現在の2倍、アジア/太平洋地域では4.5倍のパイロットが必要になる見込みだ。

さらに、我が国ではバブル期に採用されたパイロットが多く、彼らは2030年ごろに軒並み定年退職を迎えることになる。その結果、アジア/太平洋地域では約9000人のパイロット不足になると予想されており、非常に深刻な局面を迎えているといえる(出典:「我が国における乗員等に係る現状・課題」国土交通省、2013年発表)。

この状況に対し、国もパイロットの年齢制限を引き上げたり、航空大学校の定員を増加させたりと、さまざまな対策を講じている。しかし、これだけでは2030年問題を解決するには至らない。旅客機パイロットの養成には長い期間が必要で、差し迫る人材不足に迅速に対応することは難しいのだ。

国内主要航空会社およびLCC3社でのパイロットの年齢分布(出典:「我が国における乗員等に係る現状・課題」国土交通省、2013年発表)
国内主要航空会社およびLCC3社でのパイロットの年齢分布(出典:「我が国における乗員等に係る現状・課題」国土交通省、2013年発表)
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そしてLCC(格安航空会社)も、大手航空会社と同様にパイロットの高齢化が進んでいるという。LCCにとっても、若いパイロットの確保は極めて重要な課題となっているのだ。

そうした中で、関西空港を拠点とする航空会社Peach Aviation(以下、ピーチ)は、国内LCCで初めてパイロットをゼロから養成するプログラムを開始した。しかも同プログラムは、年齢や職歴などの条件を設けず、他業種からでもパイロットを目指せる点もユニークで、現在多くの注目を集めている。