戦場にいる男にとっての精神的な救い
1週間というつかの間の幸せな時間をオレクセイと過ごしたヴィカがキーウへ戻る日がやってきた。13時30分発、クラマトルスク発キーウ行きの列車のホームには出発ギリギリまで別れを惜しむ夫婦や恋人たちの姿があった。電車のドアから身を乗り出してオレクセイを抱きしめて何度もキスをするヴィカ。
「彼女の存在は天からのものだと思う。戦場にいる男にとって愛する人がいるということは精神的に救いになる。俺は彼女が帰ってしまったとは思わない。いつも自分の後ろにいるって思っている」
ドアが閉まり列車はゆっくりと動き出す。ドアのガラス越しに見えるヴィカが遠ざかっていく。オレクセイは列車が見えなくなった後もしばらくその場に立ちつくしていた。
私はそれを見とどけた。戦場で生き延びて愛する妻に再び会えることを願って。
取材・文・撮影/横田徹