朝倉vsメイウェザーに隠れたベストバウト
試合が終わると、その健闘を讃える投稿がTwitterには溢れていた。
「アナスタシア選手、ウクライナ出身っていう背景があるのと普通に可愛いし強いんでまたRIZIN出てほしい」
「マジでアナスタシア選手また出してください。試合が面白すぎる。伊澤とここまでやれる選手そういない」
「涙した人は多いのではないでしょうか? 大変な状況の中でウクライナから日本へ来て下さったアナスタシア選手 強くて美しい女性は本当にかっこいい」
「アナスタシア選手の入場、本当に美しかった。生で見ると迫力が凄くて、存在が尊くて自然に涙が出てきた」
戦争が続くウクライナから1週間かけて来日したアナスタシア・スヴェツキスカ選手(24歳)。9月24日にさいたまアリーナで開かれた格闘技イベント「RIZIN.38」で、RIZINスーパーアトム級王者・伊澤星花選手(24歳)と対戦した。その模様は、入場シーンから母国への思いが滲み出ていた。
ブルーハーツの『夢』をBGMに、セコンド3人を伴ってあらわれた伊澤選手とは対照的に、アナスタシア選手は青と黄色に染まった国旗を掲げながらひとりで入場した。やや遅れてついてきたセコンドはひとりだけ。会場に流れていたのは、ウクライナの国民的歌手ティナ・キャロリの『Ukuraine is you』。そのタイトルからして愛国心をあらわすこの楽曲のイントロは、哀愁漂うアコースティックギターの音色で始まる。選曲の理由について、アナスタシア選手はこう説明する。
「この歌はウクライナという国を象徴しており、わたしたち国民を団結させてくれます。ずっと心に残る歌です」
試合前の記者会見では「ウクライナを全世界にアピールすることが私のモチベーション」と語っており、入場時からその言葉通りのパフォーマンスを見せた。しかし、試合には負けてしまった。アナスタシア選手は、伊澤選手の寝技に粘り強く抵抗するも、2ラウンド終了間際に1本取られた。その直後、伊澤選手に駆け寄られ、2人はウクライナ国旗をリング上に高々と掲げた。
「ウクライナは独立している国、力強い国、素敵な国だと言いたかった」
そう語る彼女が抱く母国への思いとは–––––。