70代のスキマバイトが来ることも
宴会のお客さんが帰ると、宴会会場の片づけに投入された。食べ残しが多くあるテーブルを店長やパートさんらと一緒に片づけていると、60代くらいのパート女性が指先をクイックイッと曲げ、声も出さずに記者を呼ぶ。
散乱しているテーブルナプキンをつまんで「この布をたたんでほしいの。やり方、1回で覚えてね」と言われて手本を見せられたが、早すぎてわからない。しかし、質問をしてはいけない雰囲気だ。
片づけが終わると店長に「時間になったからQRコードをスキャンして」と言われ、出勤時と同じようにアプリで読み取ると「終わっていいよ」とだけ言われ業務終了。私語を口にする余裕は一切なく、必要最低限の言葉だけを交わし、店長やパートさんらほかの従業員の名前も知らないままだった。
それでもパートの女性が「今日のA社さんは若くていいわね」と喜んでいたのは印象的だった。
彼女らによると、スキマバイトでやってくる人の年代層は10代から70代までと幅広い。多忙を極める飲食店で仕事の勝手もわからないなか、70代の人が働くのはさぞ大変だろう。
一方、40代のオジサン記者は倉庫からの荷出しの仕事に入ってみた。飲食店から注文を受けてラップや食器などの資材を配達する会社で、トラックに積み込まれる商品が間違っていないかチェックするのが主な仕事だ。
巨大な倉庫にトラックのプラットフォームが併設された現場に着き、「A社から来ました~」と声をかけると、その時間帯の責任者の男性社員に控室に連れて行かれる。毎日5、6人がA社アプリで応募してくるようで、控室には仕事内容を詳しく書いたマニュアルが人数分準備されている。
「QRコードの読み込みやったら、これ読んでおいてください。あ、始業時間になってから読み始めてください」
と男性社員。契約したバイト時間を少しでも超えて仕事に絡むことはさせてはいけないとお達しがでている気配だ。
記者が入った日に集まったのはほかに40~50代の女性が4人。うち40代の女性はこれまで6、7回この倉庫会社でスキマバイトに入ってきたといい「ほかにも派遣登録をしているけど、A社経由のバイトは空いている時間にぽっと飛び込みで入れるから便利は便利よね。ほかの会社でのバイトもいくつかやっているけど待遇はピンキリ。ここ(の倉庫会社)はその中でも一番働きやすいから何度も来てるの」と話した。