境界知能の場合
境界知能の子も通常学級の授業についていくのは難しいのですが、それでも時間をかけて勉強すれば、ある程度は内容を理解できて、テストで一定の点を取れたりもします。その場合、本人は何を学ぶにしても人一倍がんばっているのですが、その苦労が親や先生にはなかなか理解されません。
大人たちには、むしろ「やればできる子」と思われていたりします。テストでいい結果が出なかったときには「勉強不足」とみなされたりもします。本人はすでに限界まで努力しているのに、親や先生から「もっとがんばって!」と言われてしまうことがあるのです。
このタイプの子は一生懸命がんばっても、いつも同級生よりも少し後れをとるような形になりがちで、自信を持ちにくいです。早く支援を受けて、その子に合ったペースで学べるようにしていきたいところです。
しかし、境界知能では特別支援教育を受けられない地域もあります。境界知能の子は勉強面で苦労していても、補習を受ける程度のサポートしか受けられないこともあるのです。2024年現在では、そういった地域のほうが多いかもしれません。この問題は、早く解決しなければいけないことだと思っています。
苦労しているけど、支援につながらない
軽度知的障害や境界知能の子は勉強面で苦労する場合が多いのですが、それがきっかけとなって支援につながるかというと、そうとは限りません。「勉強が苦手」ということで、医療機関に相談にくる家庭は多くないのです。
子どもが、「授業の内容がわからない」「授業中に指名されたとき、うまく答えられない」「先生の指示を聞き逃して、出遅れてしまう」といった場面を何度も経験して困っているのであれば、地域の教育相談窓口や医療機関に相談してもいいのですが、その段階で支援につながるケースは少数です。
子どもが心身の調子を崩したり、不登校の状態になったりしてから、初めて相談窓口を利用するケースのほうが多くなっています。
「勉強が苦手なだけでは相談できない」という誤解
そのような経緯で相談にこられた親御さんと話していると、「勉強が苦手なだけでは、こういうところで相談できないと思っていました」と言われることがあります。そして、以下のような話になります。
「授業についていけないのは、本人の努力が足りないからだと思っていた」
「勉強時間を増やして、みんなに追いつけるようにしなければ、と焦っていた」
「親が宿題をみるようにして、家庭学習の習慣をつけてきた」
「この問題は、家庭内の工夫で解決していくことだと考えていた」
「でも時間をかけてもうまくいかなくて、困っていた」
このように「勉強ができないのは努力不足であって、人に相談するようなことではない」と考えるのは、大きな誤解です。いろいろと工夫をしてもうまくいかなくて困っているのであれば、「勉強が苦手で困っている」ということを相談してもいいのです。
イラスト/村山宇希 書籍『知的障害と発達障害の子どもたち』より
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