このクリニックでは医療事故が数ヶ月ごとに頻発

業界関係者によると、一般的な美容クリニックでこうした「事故」が起きるのは、非常にまれなことだという。一方、問題のクリニックでは、そんな異常事態が、「数ヶ月ごと」(B子さん)という頻度で起きていたというのだ。

A子さんらの告発を専門家はどう受け止めるのか。浦亮一弁護士が解説する。

「法的な見地に立つと、美容医療においては、医師は患者との間で、患者の主観的願望の満足に向けて細心の注意を払って適切に施術すべき注意義務を負っているといえます。

その場合、美容医療を提供するクリニックには、執刀する医師は患者に対して適切な医療水準に適う医療行為が提供できるように、事前にリスクを検知するだけでなく、そのリスクにも適切に対応することが求められます」

告発にあるような「事故」は、医療管理体制の不備に他ならないというわけだ。

別の法律関係者によると、“まぶたに穴”の医療事故のケースでは、業務上過失傷害罪に問われる可能性もあるという。2022年1月には、顔やあごのたるみを取る美容手術でレーザーの照射を誤り、患者に重い火傷を負わせたとして、大阪府警が美容クリニックの医師と看護師2人の計3人を書類送検した。

また、昨年4月には大阪市の美容外科クリニックで脂肪吸引を行なった48歳の男性が、術後、内出血を起こして窒息死。同クリニック勤務の37歳医師が業務上過失致死罪の容疑で書類送検された例もある。

※写真はイメージです
※写真はイメージです
すべての画像を見る

一方、前述の問題のクリニックが従業員に課している「服務規定」については、労務上の問題もはらんでいる。

社会保険労務士の長尾修身氏は、「多くの会社では、従業員に服務規律を課していますが、その違反に対しては、適切な指導と改善の機会が与えられていなければなりません。

減点方式で有無を言わさずに解雇にまで至るルールを設定するのは、『解雇権の濫用』にあたる可能性があり、労働基準法違反に該当するおそれがあります」と指摘する。

すべての美容クリニックがこのような杜撰な管理体制をしいているわけでは、もちろんない。だが、空前の美容整形ブームに水を差すような一部クリニックが存在することもまた事実のようだ。

※「集英社オンライン」では、美容医療のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班