上司に少しでも意見することが許されない規律と職場の空気

「新規採用された看護師は、6ヶ月の試用期間を経て正社員として採用されるのが通例でした。最初の1ヶ月は東京で、脱毛の施術と『HIFU(ハイフ)』という医療機器を使った痩身治療の研修をして配属先が決まるようになっていました」

ハイフとは、「高密度焦点式超音波」の略称で、前立腺治療にも用いられる医療機器である。皮膚の深層に超音波を照射することで肌の引き締めなどに効果があるとされ、美容医療ではよく用いられている。

新人看護師としての研修を滞りなく終え、正社員として採用、配属先で看護師としてのキャリアを本格的にスタートさせたA子さんだったが、現場での違和感が徐々に大きくなっていった。最初に不審を抱くきっかけとなったのが、同クリニックが看護師に課していた独自の評価制度の存在だったという。

「『服務規律』というものがあるんです。就業規則というのはどこの会社にもあると思いますが、そうした一般的な規則と違うのが、『違反』と見なされたら減点されていくところ。持ち点が0になった時点で解雇の対象になってしまうのです」

入手した某クリニックの服務規定に関する資料(撮影/集英社オンライン)
入手した某クリニックの服務規定に関する資料(撮影/集英社オンライン)

集英社オンラインはこの「服務規程」が記載された資料を独自に入手した。そこには「身だしなみ」「就業態度」など細かく規定が設けられていたが、特異なのはそれぞれの項目に「ポイント」が記載されていること。

「減点方式になっていて、正社員は持ち点5点からスタート。患者さんと接する仕事ですから、身だしなみや就業態度について問われるのはわかるのですが、おかしいのは、同僚や組織に対する『マイナス発言』という違反項目がある点です。

しかも、どういった発言が“マイナス”なのかがはっきりと示されていないんです。上司に少しでも意見したりすると、『マイナス発言』と見なされてしまうおそれもあるため、下手なことは言えない。職場の空気は最悪でした」

さらに、A子さんがこの服務規律以上に問題視するのが、施術に関するトラブルの頻発だったという。