ビジネス特化型SNSなどで直接アプローチする企業も
小林氏によると、現在、人材業界は『リクルートエージェント』や『doda』といった転職エージェントが牛耳っている側面が大きく、企業が人事採用にかける費用は莫大なコストになっているという。
「ただ、採用コストは抑えたいため、できれば転職エージェントを活用する以外の方法で人材を確保したいと考え、人事採用活動を直接行おうとする企業も増えている。そういった背景があり、優秀な人材とは関係をつなげておこうと考える企業が多くなっているので、転職ファストパスのような制度や交渉は今後さらに浸透していくでしょう。
最近では『LinkedIn(リンクトイン)』という、世界最大級のビジネス特化型SNSを用いて人事担当者と求職者が直接つながるケースも増えています。アメリカでは人事と求職者が直接やり取りを行うのは当たり前に行われている。日本ではまだ一部の外資系企業などでその流れが来ている程度ですが、これからは国内でも転職エージェントを仲介せずに、人と企業の直接のつながりが重視される時代に変化していくのではないでしょうか」
住友商事は2025年4月に入社する新卒学生の採用面接から、学生が面接官を5段階で評価する制度を導入するという。
もともと就職・転職活動は企業と求職者がお互い“選ぶ側”・“選ばれる側”であり、Win-Winの関係となってマッチングするものだが、大企業や人気企業はこれまでは常に“選ぶ側”だという自負が強かったのかもしれない。しかし、そんな人材不足とは無縁だった企業でさえも、“選ばれる側”であることを自覚しなくてはいけない時代が来ているということではないだろうか。
取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio) 写真/shutterstock