「転職ファストパス」で中途採用試験は最終試験のみ?
少子化の影響もあってどの業界も人材不足のため、近年の就活は学生の売り手市場という状況が続いている。
そんななか「転職ファストパス」もしくは「プライオリティパス」と呼ばれる、中途採用試験を最終面接までパスできるという一種の“特権”が話題に。たとえばA社で内定が出たものの、その内定を辞退してB社に就職した場合、3年以内であればA社の中途採用試験を最終面接だけで再挑戦できるといったものだ。
この転職ファストパスについて、就活・転職活動事情に精通している人材コンサルタントの小林毅氏が解説する。
「企業が求職者に特別に渡しているものなので顕在化はしていませんが、転職ファストパスと名はつかなくとも、じつはこのような交渉は昔からあったんです。転職エージェントが間に入り、求職者の意向を企業に伝えて、最終面接の機会を再度設けるのが一般的です。
最近では求職者側がこのような交渉をSNSで情報を発信したり、企業側が独自の制度として発表したりしていたため、以前から水面下で行われていたことが転職ファストパスとして認知されるようになったのでしょう」(小林氏、以下同)
小林氏の推察によると、学生の売り手市場が顕著になった2018〜2019年ごろから、転職ファストパスを出す企業が表面化せずとも増えてきたのではないかとのこと。では、転職ファストパスが出されやすい企業に特徴や傾向はあるのだろうか。
「人材確保に苦戦している中小企業や、離職率が激しい外資系企業、ベンチャー企業といった中途採用の割合が多い企業では、転職ファストパスが出されやすい傾向があるかもしれません。思うように人材が確保できないと危機感を抱いた企業が、優秀な人材とのつながりを保つためにパスを出すという意図が大きいでしょう。
しかし、現在ではネームバリューのある人気企業でも同じような制度を設けている会社はあります。業種や企業の規模関係なく、多くの会社が人手不足に危機感を抱き、どうにか優秀な人材に入社してもらおうと試行錯誤しているのです」
つまり、「三顧の礼」ではないが、企業側が手厚く迎え入れる体制を整えなくてはいけないほど、優れた人材は各業界・各企業が取り合っているということなのだろう。