何時間かけても聞き取り不可能な難曲

「SADSはまず、大ヒット曲『忘却の空』がそもそも全然聞き取れないと言われていますよね。実際、『水ダウ』でも以前、“SADSの『忘却の空』サビを一発で聞き取れる人、0人説”が検証されていました。『だからVELVET(ベルベット)の空の下~♪』というフレーズなどは確かに、そもそも“VELVET”という言葉を知らないとリスニングが全然できない点で、難しかったです。

SADSの1stアルバム「SAD BLOOD ROCK'N'ROLL」
SADSの1stアルバム「SAD BLOOD ROCK'N'ROLL」

ただ、そんな『忘却の空』をはるかに凌駕するのが、2000年に発売されたSADSの3rdシングル『赤裸々』。清春の特徴的な巻き舌がかなり強く出ているうえ、とにかく早口で歌い上げるため、難易度は今回放送された『霧』の比ではない。『霧』の難易度を100とするなら、『忘却の空』は40程度で、「赤裸々」は1000以上はある。これに挑戦したら、1か月以上の監禁生活になったでしょう」

続いては、黒夢の難しい曲。『水ダウ』では以前、2014年に発売された曲「Reverb」の聞き取り問題が出題され、その難易度が話題となったが…。

オリコンチャート1位も獲得した黒夢の4thアルバム「FAKE STAR 〜I'M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER〜」
オリコンチャート1位も獲得した黒夢の4thアルバム「FAKE STAR 〜I'M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER〜」

「こちらはファンの間でも、『Reverb』が最難関レベルという認識であっています。基本的には後期になるほど歌い方のクセが強くなっていて、現状は『Reverb』が、黒夢名義として正式にリリースした最後のシングル曲ですからね。

ちなみに、1998年にリリースされた黒夢の大ヒット曲『MARIA』は当時、歌詞カードなしで発売されました。これは、清春が『カラオケで歌ってほしくない』と考えたことが理由だったそうですが、この際、はからずともファンの間では、歌詞を聞き取ることを求められる、“水ダウ状態”になってしまったのです」

1996年に黒夢のライブ会場限定で配布された幻のCD「EITHER SIDE」
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そして最後は、いまなお、新曲を作り続けている清春(ソロ)の曲だ。

「ソロは自由度が高く、また実験的な曲も多いため、さまざまなベクトルから難易度が高い曲が多いです。そんな中でも個人的に推したいのが、2005年にリリースされた『wednesday』。この曲の凄いのは、かなりスローテンポな歌にも関わらず、歌詞が全然聞き取れないこと。

ある意味で、清春節を一番感じられる曲ともいえますね。なんてことない日本語部分すら聞き取るのが難しいうえ、『絵型にfloral powder(フローラルパウダー)を背中にoral flower(オーラルフラワー)』といった、聞き馴染みのない独特の言葉まで登場するため、リスニングだけで書き起こするのは実質不可能。『水ダウ』で挑戦したら、一生かけても部屋から脱出できないことになりそうです」

そんな清春は、3月20日に新アルバム「ETERNAL」を発売し、同月25日から48会場全61公演を回る超ロングライブツアー「清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩 NEVER END EXTR」が始まる。清春は、まだリリースされていない新曲をライブでいきなり披露することがよくあるので、ファンは耳が鍛えられている。

そんなガチ清春ファンに向けた高難度のリスニング企画が実現することを、かつての少年は夢見てる、いつまでも。

取材・文/集英社オンライン編集部