新NISAを思いとどまれる理由
国内外問わず一部の巨大企業が好調なだけで、多くの人には関係ないという現状が見えてきた。とはいえ、株価好調の企業が少なくないことも事実。「せっかく新NISAがスタートしたのだから」と投資で利益を上げようと考える人もいるだろう。ただ、柴山氏はこれから株式投資に興味を持つことの危険性を指摘する。
「現在のアメリカの株価を見ると、企業本来の評価以上の高値がついており、“マグニティセント7 が好調”というよりは“ITバブル”といっていい。アメリカ政府もバブル抑制のために金利引き上げに動いているため、アメリカの景気後退はおそらく時間の問題です。日本経済はグローバル経済と完全に接続されており、アメリカの景気悪化はすなわち日本の景気悪化を招くことになりかねません。
ここ最近、メディアに出演しているエコノミストには『NISAを始めよう!』と勧めるケースが目立っています。ですが、老後資金を確保するために長期運用でコツコツ始めたい人は別として、『株で儲けてやろう』という思惑から新NISAに登録して投資を始めることは危険です」
また、柴山氏は新NISAそれ自体の問題点についても言及している。
「新NISAは国内企業だけではなく海外企業の株も購入できます。国内企業のみであれば、日本国内の経済でお金が回る好循環を作ることも期待できたのですが。海外企業に投資するために円が売られてしまうと、円安がさらに加速してしまう。円安の影響によって個人も企業も苦しい状況が続くなかで、そのあたりは今一度見直されてほしいです」
深刻なバブル崩壊は起きない?
現在の株価の好況を“ITバブル”という言葉で説明したが、平成初期に起きたバブル崩壊のような事態が起きる可能性は低いと柴山氏は予測する。
「30年前は借金をしてでも国内の株式や土地を購入する人が少なくなく、どんどんバブルが膨れ上がって崩壊に至りました。そのため、バブル崩壊によってかなりの経済的打撃を受ける人や企業が少なくなかったんです。ですが、現在の株価上昇はアメリカの巨大テック企業やグローバル企業によってもたらされているという違いがあります」
また、30年前のバブル崩壊当時では、金融市場が底割れしてしまったときの対応策を政府は持っていなかった。しかし、量的緩和政策やマイナス金利政策といった金融市場をコントロールするための技術を政府は現在持っており、大幅な株価急落は起きにくいと考えられる。そのため、仮にバブルが崩壊しても“大恐慌”と呼ばれる事態は起きないという。