一人寂しく晩年を迎えないためにも……

これは精神科医というより、個人的な人生観になりますが、私は人に優しく接したり、できるだけ親切にしよう……と思っています。

毎日、さまざまなことが起こりますから、必ずしも思い通りにいかないこともありますが、基本的には「優しい人」でありたいと考えています。

これまでを振り返ってみても、人に対して偉そうにしたり、冷たい態度を取っている人で、ずっと幸せそうな人には会ったことがありません。

どんなに社会的な地位が高かったり、大金持ちの人でも、偉そうな態度を取ったり、人に対して冷たい人のところには、誰も寄りつこうとしなくなるのです。

高齢者専門の精神科医として、寂しい最期を迎えた年配の方々をたくさん診てきた経験から、自然とそう考えるようになったのだと思います。

「情けは人のためならず」は、科学的にも正しかった! 優しい人は損をしない「返報性の法則」とは_4
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私は、たくさんの本を出すことを含めて、数多くの「打席」に立ちたいと思っていますから、できるだけ打席を減らしたくありません。

根底にあるのは、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」的な考え方で、どんなことでも、やってみなければわからない」と思っています。

こちらから積極的に人との出会いを求めるようなことはしませんが、来るものは拒まず、できる限り穏やかに人と関わりたいと考えているのです。

現在は出版社からの執筆依頼が相次いでいますが、この先はどうなるかわからず、落ち目になることだってあると思います。

すべての依頼を受けることはできませんが、偉そうな態度で断るのではなく、「今はとても忙しくて、お受けできないんです。もう少し暇になれば、その仕事を受けられるかもしれません。そのときに、ぜひやらせてください」みたいな対応を心がけています。

偉そうな断り方をしていたのでは、二度と依頼が来なくなって、自分で打席を減らすことになってしまうのです。

文/和田秀樹 画像/shutterstock

『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))
和田秀樹 (著)
「情けは人のためならず」は、科学的にも正しかった! 優しい人は損をしない「返報性の法則」とは_5
2024/2/2
1,628円
208ページ
ISBN:978-4295409328
【発売から1週間で重版決定!】毎日を明るい気持ちで、機嫌よく、前向きに過ごすためのヒントをまとめた1冊!

▼人に優しくできれば、人生が回り始める

あなたは、自分のことを「優しい人」だと思いますか?

こう質問されて、「はい」と即答できる人は、それほど多くないはずです。
ほとんどの人が、「人には優しくありたい」と思っていても、日ごろの言動を冷静に振り返ってみると、意外に優しくない自分に気づくのではないでしょうか。
人に優しくする際には、さまざまな心理や感情が働いています。相手に対する「思いやり」や「好意」の気持ちだけでなく、「打算」や「自己防衛」といった損得勘定が働いていることもあります。

相手に嫌われたくないと思って、表面的な言葉で取り繕う優しさもあれば、嫌われることを覚悟で進言する優しさもあります。
価値観や考え方が多様化した現代社会では、何が本当の優しさなのか、ハッキリと明確にはわからないような状況になっています。
人に優しくするというのは、意外と複雑で、思い通りにいかないものです。

人に優しくすると、自分の気持も良くなることで、脳内にセロトニンやオキシトシン、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌されて、心身にいい影響が生まれることが科学的に明らかになっていますが、毎日の生活にもさまざまな好循環をもたらしてくれます。
しかし、私たちの生活には、人に優しくなれない要素がたくさんあります。
物価高、上がらない給料、度重なる増税などによって、世の中全体がギスギスとしていますから、どうしても自分のことだけを優先して考えるようになり、周囲の人を慮るような精神的なゆとりを見失いがちです。
こんな時代だからこそ、「優しさとは何か?」を考えることで、その意味と意義を改めて見つめ直す必要があると感じています。

人に優しくできれば、人からも優しくしてもらえます。
優しい人に囲まれると、たくさんのいいことがあります。
たくさんのいいことがあると、人生がうまく回り始めます。
人生がうまく回り始めれば、もっと人に優しくすることができます。

この本をお読みいただいて、毎日を明るい気持ちで、機嫌よく、前向きに過ごすためのヒントを見つけてほしいと思います。
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