遺体から「エチレングリコール」を検出した
調べによると両容疑者は2018年4月ごろ、台東区の自宅マンションの部屋などで健一容疑者の姉の細谷美奈子さん(当時41歳)に不凍液を摂取させて同29日ごろに殺害した疑い。
美奈子さんは当時、両容疑者と同じマンションの別の階に住んでおり、同年5月に親戚から「連絡がつかなくなった」と110番通報があり、自室で死んでいるのが見つかった。
美奈子さんは数日前から頭痛や発熱を訴え、医療機関を受診していたが、特に既往症もなかったために、死後に東京都監察医務院が行政解剖を実施した。行政解剖での死因は「敗血症」とされたが、敗血症を引き起こした原因までは特定できなかった。
しかし、昨年3月に変死した次女の美輝ちゃんの事件を捜査していた警視庁が、保存されていた美奈子さんの遺体の一部を調べたところ、美輝ちゃんの時と同じ不凍液の有害成分「エチレングリコール」を検出した。社会部デスクが解説する。
「押収した健一・志保夫妻のパソコンやスマートフォンの解析から、2018年3月から4月にかけて数回にわたって不凍液を購入した履歴が判明しています。同年6月にはホテルの経営母体『ホソヤ産業』創業者である父親が死去し、健一容疑者は会社の代表取締役に就任するとともに、美奈子さん名義のものも含めて不動産などの財産も軒並み相続した。
要するに健一・志保夫妻が“金のなる木”を、姉の殺人という極めて短絡的で残忍な方法で入手した疑いが強まり、再逮捕に至ったということです」
資産家のボンボンとして生まれ育ち、相続の支障となる親族を毒殺しようと企図する構図は、昨年3月に大阪府警が着手した京都タリウム殺人事件のデジャブのようだ。
実際、美奈子さんはホソヤ産業の経理も担当しており、健一容疑者の「浅草ホテル旅籠」の放漫経営ぶりに心を痛めていた。健一容疑者の知人は、美輝ちゃん殺害事件の取材当時、記者にこう答えていた。
「私はお姉さん(殺害)に関しても志保の意思が強く働いていると思います。当時お姉さんはホソヤ産業の経理を務めていて、『ケンちゃんにはお金を任せられない』とよく言っていました。
その後に同社の創業者のお父さんが亡くなって、健一ともう一人のお姉さんが遺産配分をめぐって揉めたという人もいたのですが、結果的にはわずかに健一の取り分が多い形で双方納得して受け取っています。
ですが、あのとき、志保が健一を背後から煽っていたのは間違いありません。当初、相続のことなど何も気にしていなかった健一が、『姉が遺産を多く取ろうと画策して動いている』と言い出すようになりましたから。こんなふうに、さまざまな場面で志保の意思が働いているんですよ」