「男性保育士を排除では多様性を保てない」

保育士や教員らが引き起こした性加害が相次ぎ、保育や教育の現場で、性犯罪歴がないことを確認したうえで採用する「日本版DBS」の議論が本格化。政府は今国会での法案提出に向け、性犯罪歴の照会期間をどうするかなど、詰めの調整を続けている。

子どもへの性加害を防ぐ取り組みへの関心が高まる一方で、男性保育士全体への風当たりも少しずつ強まっている。

保育士同士が悩みを相談し合うサイト「ホイクタス」を運営する石井大輔さん(55)は、自身も男性の保育士として働いてきた経験を振り返り、「子どもたちとじゃれあっていたらまわりの職員に『あまりやらないで』と言われたことがありました。それからは、おままごとやミニカーなど、子どもと距離を保てる遊びを心がけるようになりました。園長になってからは、お散歩はしてもおむつ替えはしない、といった配慮もしていました」と語る。

保育ノウハウ共有サービス「ホイクタス」を運営する石井大輔さん
保育ノウハウ共有サービス「ホイクタス」を運営する石井大輔さん

そして、研修などで各地の男性保育士とも話すようになった今、「自分(保育士)と子どもが二人きりにならないように気をつける」「子どもと接触しすぎないように注意する」といった配慮をする動きが強まっていると感じるという。

「男性保育士への風当たりが強くなると、『男性保育士を採用しない』という園も出てくるかもしれません。でも、男性保育士を排除してしまっては、子どもが接する大人の多様性も保てなくなります。子どもは、『声が高い人もいれば、低い人もいる』『力の強い人もいればそうでない人もいる』といったことを体感しながら、成長していくんです」(石井さん)