保育士同士・保護者との人間関係構築が大事
石井さんは「男性も女性も互いに理解し合い、保護者や子どもの信頼を得ていくことが大事です」と、人間関係の構築やチームワークが何より大切だと強調する。
「もちろん、性犯罪歴がある人を子どもと関わらせない、という対策も大事ですが、保育士がストレスをため込まず、協力し合って子どもを育てる職場づくりも、性加害の防止につながります」
「コンパス幼保園 市川校」でも、保育士同士が協力し合って子どもを見守ることが、結果的に性被害を防ぐことにつながっているという。
「たとえば、私たちの園では、複数人の大人が見守る中でたくさんの子どもたちが一緒に着替えたり、トイレにもみんなで行ったり、という風景が日常です。こうして保育士が協力し合う中で子どもたちがみんなで行動すれば、保育士の業務負担の軽減にもつながりますし、性被害が発生する余地がなくなってきます」(島田さん)
島田さん自身、過去に勤務した園では他の保育士との関係に課題も感じていたという。
「保育園は女性が圧倒的に多い職場。私も、女性保育士が更衣室で弁当を食べている間は、別の場所に行ってひとりで弁当を食べるなど、男性保育士ならではの寂しさを感じることもありました。男女ともにストレスを抱え込まないための職場づくりが必要です」と語る。
そのうえで、保護者とのコミュニケーションの大切さも訴える。
「30代の男性が園長を務める保育園では、保護者から『男性保育士が子どもの着替えの世話をするのはちょっと……』と言われたこともあると聞きました。保育士の不祥事のニュースが流れると、『ここの園は大丈夫ですか』と心配して尋ねてくる保護者もいます。
だからこそ、保護者との信頼関係はとても大事。保護者と男性保育士が何度も話すうちに『この先生は大丈夫だな』と思ってもらえれば、男性保育士を排除する必要はなくなります」
実際に、別の園に通う子どもの保護者からは「子どもをあやしたり、機嫌をとったりするのに、男性も女性も関係ない。運動会などのイベントごとも仕切ってくれるし男性保育士がいてくれたほうが助かることも多い」「不審者が園に入ったとき男性の保育士が捕まえてくれ、子どもを守ってくれた」と男性保育士に感謝する声もあがる。
日本版DBSの活用によって性犯罪歴がある人物を保育園に入れないことはもちろん大切だが、男性保育士全員を排除することは必ずしも問題の解決策とはならない。男女の保育士同士がともに協力し合いながら、保護者や子どもの信頼を得ていくことが求められている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班