『ゴールデンカムイ』を支えた監修者たちのコラム

実写版では広大な雪景色のロケーションで『ゴールデンカムイ』の世界観が再現された ©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
実写版では広大な雪景色のロケーションで『ゴールデンカムイ』の世界観が再現された ©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

――本書には先生ご自身の解説だけではなく、樺太アイヌ、北方少数民族のニヴフ、ウイルタ、さらには物語後半の重要人物ソフィアのモデルを生んだロシア近代史についても、それぞれの専門家が書かれた濃密なコラムが収録されています。寄稿者の人選はどのように決めたのでしょうか。

編集者さんから「樺太編も含めた物語全体の文化解説をして欲しい、それぞれの専門家のコラムも入れたい」と相談があり、それなら、とこの人たちにお願いしました。みんな原作の監修に関わっているので、「内部の人が種明かしをする」というこの本のコンセプトにも合いますからね。

彼らともよく話をしているんですが、ニヴフやウイルタなんて、ほとんどの人が聞いたこともないような存在です。それについて書かれたものはあるにはあるけど、専門書や論文など、一般の人が読むものではありません。何万人という単位で読まれるかもしれない形で概説的なものを書いたのは、この本がたぶん最初でしょう。少数民族文化の紹介という点で、非常に画期的な本になったと思います。寄稿してくれた人たちもそう言っていますしね。

――樺太についてはコラムに加えて中川先生の解説も充実しており、守備範囲の広さに驚きました。

まあ、ここに書かれている民族はほぼすべて、私は実際に暮らしているところを訪ねて、話を聞いていますからね。初めて樺太に行ったのはソ連時代の1990年で、ペレストロイカのおかげで大規模な調査許可が下りたから行けたのですが、飲み水を手に入れるのにも苦労する状況でした。