がんの死亡率は下がっている
がんについては、さまざまな統計がとられています。主なものは、死亡数(死亡率)、罹患数(罹患率)、生存率です。このうち、死亡数(死亡率)と罹患数(罹患率)は、がんに対する国の政策や、都道府県の地域医療計画を立てるのに活かされます。生存率は、臨床医が患者さんとともに治療方針を立てるうえで重要なデータの一つです。
がんで亡くなった人の数(死亡数)は、国が法律に基づいて集計しています。がんによらず、人が亡くなると医師が死亡診断書を作成します。それをもとに各市区町村が死亡票を作成し、厚生労働省が国際疾病分類第10版(ICD-10)に基づいて死因を分類し、人口動態統計として公表します。この統計でがん死亡数が確定します。
日本のがんの死亡数は増加を続けており、2021年にがんで死亡した人は38万1505人(男性22万2467人、女性15万9038人)でした。しかし、がん死亡数の増加には、日本の人口構成が高齢化している影響もあると考えられます。
がんは高齢になるほど死亡率が高くなるためです。そこで年次推移を見る際には、人口構成の影響を除いた年齢調整死亡率というものが使われます。これは、基準となる人口構成のモデルをつくっておき、ある年の人口構成がモデルと同じだった場合に死亡率がどれだけになるかを計算するものです。日本では、1985年(昭60年)の人口構成をもとにしたモデル人口が使われます。
年齢調整死亡率の年次推移を見ると、1990年代の半ばをピークに減少傾向にあることがわかります(図1-7)。
国のがん対策推進基本計画(2007年から。現在は2023年からの第4期)では、75歳未満の人の年齢調整死亡率を計画の評価指標の一つとしています(第3期を除く)。