輝かしい活躍の舞台裏で抱えていた心の闇
1983年2月4日、カレン・カーペンターが32歳でこの世を去った。彼女の歌声と命を奪ったのは、常に「自分は太っている」と考えてしまうことによる拒食症(神経性食欲不振症)だった。
デビュー当初、普通よりほんの少しぽっちゃりしている程度だったカレンに対して、一部の人々が「デブの田舎者」などと心ない誹謗中傷をした。
カレンはその言葉を聞き流すことができず、決して太っていたわけではないのに「もっと痩せれば愛されるようになるかもしれない」と考えるようになってしまった。
輝かしい活躍の舞台裏では、常に人に見られる立場であること、芸能界という世界で女優やモデルと頻繁に会う機会があったこと、そして音楽メディアに書かれることなどを過剰に気にするようになり、カレンはその病状を悪化させていった。
1980年、30歳の時に結婚するものの、生活は惨憺たるもので翌年には別居。カレンの病はますます悪化の一途を辿り、その痩せ細った身体と疲れ切った心は、カーペンターズの活動にも暗い影を落とすようになる。
その後、治療を受けた甲斐もあり、約14kgも体重を戻したというが、急激な体重の増加は、長年の無理なダイエットですでに弱っていた心臓に大きな負担をかけていた……。
今ではカーペンターズは永遠になった。『遙かなる影』『愛のプレリュード』『雨の日と月曜は』『スーパースター』『愛にさよならを』『イエスタデイ・ワンス・モア』『トップ・オブ・ザ・ワールド』『青春の輝き』などを耳にするたび、多くの人々がカレンのことを想い出す。
ポール・マッカートニーは、カレンの歌声とカーペンターズの音楽についてこう賛美した。
「世界で最高の女声であり、旋律が美しく、豊かで、そして独特だ」
文/TAP the POP
参考文献
『カレン・カーペンター 栄光と悲劇の物語』(レイ・コールマン著/安藤由紀子・小林理子訳/ベネッセコーポレーション)