マクドナルドの顧客は他チェーンに流出するのか?
SNSでは、マクドナルドからよりコストパフォーマンスのいいモスバーガーやバーガーキングに乗り換えようという声も聞こえてくる。確かに一部の消費者のなかには競合他社に乗り換える層もいるかもしれないが、値上げによってマクドナルドの顧客が著しく流出するかといえば、その可能性は低いだろう。
これは、ハンバーガーチェーンがどのような消費者の課題解決に役立っているのかを考えるとわかることだ。
飲食店の消費者調査などを行なう「ファンくる」では、「ハンバーガー店についての意識調査」を実施している。この中でハンバーガー店を利用する理由のトップは「手軽に食事ができるから」(69%)というものだ。
当たり前のように聞こえるが、これは最も重要なポイントである。
多くの消費者は「ハンバーガーを食べたい」のではなく、「近場で」「テイクアウト・デリバリー・店内飲食の多様な形態で食事ができ」「カトラリーなどの面倒な器具を使わずに清潔に食べられ」「あらゆる年齢に対応でき」「迅速に空腹を満たすことができる」といった点にメリットを感じて、ハンバーガー店を選んでいるのだ。
そうなると、圧倒的な店舗数を持ち、全国レベルで均質な味を提供する店舗オペレーションを確立したマクドナルドは有利になる。つまり、死角のないマクドナルドはインフレを抑え込んでもなお、値上げができる余地があると踏んでいるのだ。それは結果的に企業に利益をもたらし、新たな成長ステージへと向かうものであるはずだ。株価の上昇は将来的な配当金の増額に期待しているという思惑もあるだろう。
一方、リピーターに支えられているモスバーガーやバーガーキングは値上げがしづらく、集客に注力する必要がある。値上げよりも集客のほうがはるかに難しく、中期的にはマクドナルドの優位性がまだまだ高まるはずだ。
取材・文/不破聡