「ステレオ漫画の巻」(ジャンプ・コミックス第197巻収録)

今回はフィーチャーする亀有公園前派出所のキャラクターは、秋本麗子。なんと彼女、両さんと人格が入れ替わってしまい……?

さてこの麗子は『こち亀』初のレギュラー女性キャラだ。連載開始から2年を経た1978年、第100話「麗子巡査登場の巻」(ジャンプ・コミックス第11巻収録)で、派出所にミニパトで突入して初登場。派出所を半壊させながら悪びれもしないその天真爛漫ぶりに、派出所の面々は目を白黒させていた。

1970年代は「男らしさ女らしさ」といった旧い考えの男もまだまだ多かった。これは両さんにしても然りだ。

その一方で、1960年代後半からのアメリカでの女性解放運動「ウーマン・リブ」が日本でも活発に。その勢いが衰退しつつあった時代に、快活でありながらもチャーミングさ、無意識なセクシーさを兼ね備えたキャラクターとして登場したのだ。

両さんとの関係性について着目すると、騒ぎを起こしてばかりいる年上男性の面倒をかいがいしく見てくれる、まるで映画『男はつらいよ』 の主人公・車寅次郎としっかり者の妹・さくらを彷彿とさせることも多々ある。麗子は、こういったやや古典的な女性像も、より明るく時代に合わせてアップデートしつつ備えている。

やがて、実業家夫婦の娘であり、教養、運動神経ともに抜群という良家の令嬢としての一面を見せるようになってくると、趣味やスポーツやレジャーを謳歌する、アクティブな現代女性として描かれるようになる。そのため、勤務態度も至極真面目に。

さらには、中川と同様に家業である会社経営を世界規模でこなす、公務員と実業家の二足の草鞋を履いた状態に。1980~1990年代の現実社会では、次第に女性の活躍の場が広がりつつも、雇用機会や社会参画の平等性の立ち遅れが見られた。

麗子はそんな現実を漫画の中で軽やかに乗り越えていく、タフでありながらしなやかな女性としての魅力を備えるようになっていたのだ。

その後は、人知れずボランティアに励んだり、趣味や職務へのこだわりを見せたりと、彼女の魅力はさらに増していく。新葛飾署婦警たちの頼れるお姉さん的な立場にもなり、不動の『こち亀』真ヒロインのポジションであり続けている。

さて本作だが、左ページを「ステレオ漫画の巻【両津編】」、右ページを「ステレオ漫画の巻【麗子編】」と銘打って同時に描くという、トリッキーな構成になっている。
1ページずつ表示する電子書籍においては、【両津編】と【麗子編】のページを交互に読み進める形だ。麗子と両さんという、何もかもが違いすぎる両キャラの対比にもなっていて、おもしろい。

それでは次のページから、作品の主人公とヒロインの人格が入れ替わってしまい巻き起こる騒動をお楽しみください!!