「品質の追求」と「商品の完成度」がロングセラーの秘密
物価高騰の影響下により、1袋の内容量は発売当時の130gに比べて約4割減の77gになっているものの、「お菓子の食べられ方の多様化」に合わせる形で企業努力をしてきたという。カルビー株式会社でかっぱえびせんのブランドマネジャーを務める塩﨑高広氏に、ロングセラーとなった背景を聞いた。
かっぱえびせんは、カルビー創業者の松尾孝氏が幼少期のころに好んで食べていた「川えびの天ぷら」にヒントを得て、 1964年に発売開始した商品だ。ロングセラーを続ける理由について、塩﨑氏は「発売当初における商品開発の“作り込み”が秀逸だった」と説明する。
「小麦粉からあられを作り、スナック菓子として1955年に商品化した『かっぱあられ』が、かっぱえびせんの前身となる商品ですが、ここから品質を追求するために『かっぱえびせん』の発売まで26回ものリニューアルを繰り返しました。
これは年に3回も商品のブラッシュアップを重ねていたことになりますが、現在の商品開発では3年間に1回ほどのペースで改善を行うことからすると、考えられないほどのスピード感で商品の完成度を高めていたことになります」(ブランドマネジャー・塩﨑高広氏、以下同)
カルビーでは、かっぱあられを販売する前まではキャラメルや飴を扱っていた。「健康的で栄養豊富なお菓子を世に出したい」という創業者の思いから生まれた“探求心”が商品を改良するモチベーションになった。
それが今でもカルビーに根付く「一人・一研究」と呼ばれる商品開発のDNAとして、脈々と受け継がれている。
かっぱえびせんは、発売開始から6年で売上100億円を超えるブランドに成長。「やめられない、とまらない」のキャッチコピーで鮮烈な印象を与え、さらには全国の小売店やスーパーに販売網を広げる戦略で、多くの消費者に愛される商品へと進化を遂げた。
かっぱえびせんのヒットを皮切りに、「サッポロポテト」(1972年発売)や「ポテトチップス」(1975年発売)など、次々とロングセラー商品を生み出し、“スナックといえばカルビー”という不動の地位を確立したのだ。
類似品が生まれない唯一無二の理由
また、かっぱえびせんは他社からほとんど類似品が出ていないのも大きな特徴となっている。その理由として、「参入障壁の高さ」と「小麦を加工する技術力」の2つが挙げられると塩﨑氏は話す。
「かっぱえびせんの主原料は小麦でできており、それを蒸しながら、もち生地のベースを作っていき、揚げるのではなく香ばしく煎ることで、サクサクの食感とのどごしのよさが生まれます。
こうした小麦の加工へのこだわりから、かっぱえびせんを1袋作るのに3日間はかかるんです。小麦の加工技術や製造に必要な機械を揃えようと思うと、なかなかハードルが高いことも、市場に類似品がほとんど出回らない理由でしょう。“唯一無二のお菓子カテゴリー”の代表的な商品として成長してきたと捉えています」