「スナック菓子からせんべいへ」の壁
「商談に行っても目を合わせてもらえませんでした。『湖池屋の商品がなくてもうちは売上をつくれるから』という感じで、しばらく相手にされなかったですね……」
こう切り出すのは、2016年の湖池屋(東京都板橋区)入社時に九州地方の営業を担当していた髙戸万里那さんだ。
髙戸さんは九州出身で、湖池屋ではなくカルビーのポテトチップスに慣れ親しんでいた。
「だからこそ九州では湖池屋が浸透しなくて当たり前、と思いながら営業をしていました。スナック菓子市場は頭打ちで、これ以上、ポテトチップスで新しいことなんてできるわけがない、という空気感でした」と当時を振り返る。
日本では1990年代後半より少子高齢化が始まり、2008年をピークに人口が減り続けている。
スナック菓子は従来、50代を超えると食されなくなる傾向が目立ち、せんべいなどの米菓に移行するのが通説とされていた。
高齢化が進めば進むほど、スナック菓子を食べる層が減る。市場が縮小傾向だった理由はここにある。
「年齢を重ねていくことで、今までよりも少量でよくなるなどの量の問題もあるのですが、味の質に関しても高いものを求めるようになってきます。
たかがスナック菓子とはいえ、求められるレベルが変わってくる。そこまでこだわるのか、という驚きがないとお客さまを取り込めません。
『スナック菓子からせんべいへ』という既成の価値観に飲み込まれてしまう前に、『いくつになってもスナック菓子を食べていい』という受け皿になるような商品が必要だと考えました。
本格的な味で、料理やおつまみにも代わるようなもの。ホンモノを知る大人たちに安心して食べていただけるスナック菓子をつくるために動き出しました」
当時を振り返り、広報部の小幡和哉さんは話す。