ドライブインの550円のオムライスから始まった「選挙漫遊」

──以前は見かけなかったことですが、そういえば最近、畠山さんは政治的な意見、考えをTwitterで発信することが増えているように思います。

畠山 これまでにもSNSはいろいろ試してきていて、いまは僕自身が言わないといけないと思うくらい、政治に危機感を抱いています。おそらく僕は、右寄りの人からは「左」に、リベラルな人には「右翼っぽい人と仲がいい」と見られるんですけど、僕自身は公平、フェアでありたい。

だから特定の候補を応援することはしません。「選挙に出てくれる人はみんな頑張って」と思っています。以前は僕が意見を発信しなくても、有権者のみなさんがしっかり判断してくれるだろうという気がしてたんです。

「被災地の現状よりも、そこで食べた550円のオムライスの写真のほうがバズるSNSの現状にモヤッとして…」選挙に憑りつかれたライター・畠山理仁が提唱する“選挙漫遊”の極意_2
イベントには大川興業の大川豊総裁(右)も登場した(撮影/朝山実)

──SNSで試されてきたというのは?

畠山 自分が食べた料理の写真を載せて、内容は選挙にかかわるマジメなことを書いていたんです。そうすると食べ物の写真がフックになって、より見てもらえる。webメディアの人と話したときに「いまビュー数を稼げるのはネコ、オッパイ、ラーメンの三つだから」と言われたのがヒントになっています。オッパイはともかく、動物とラーメンの写真を載せて興味をもってもらう。それが後に「選挙漫遊」という概念を生み出すきっかけにもなりました。

前田 えー、そうなんですか?

畠山 たとえば福島県で被災して避難している人たちを取材したことを伝えたくて、記事を書くんです。だけど、これが届かなかった。「どうしたら読んでもらえるんだろうか?」と悩みながら、福島に向かう途中のドライブインで食べたオムライスの写真を載せたんです。「これを食べて取材に向かいます」と。そうしたら、ええっ!?というくらい多くの人に読まれた。550円のオムライスが、家を追われ避難している人についての文章の何百倍も見られるのかと愕然とするわけです。

前田 わかります。

畠山 それで次から食べ物の写真の下に一緒に伝えたい話を書くということを試すんです。「写真と本文は関係ありません」「避難している人たちの近くの名物の〇〇食堂の……」とやっていくと読んでくれる人が増える。そうか、政治は難しいと思われているけれど、「〇〇温泉に入りました」と写真を入れれば読まれる。「それなら今後は、選挙漫遊をしよう」と。

前田 なるほど。まんまと私も「漫遊」に引き込まれました(笑)。

畠山 2022年7月の参院選のときには、東京選挙区の立候補者「34人全員に会う」と決め、最後の一人で立憲民主党から出馬された蓮舫さんに会うために、長野まで車を運転していったんですよね。蓮舫さんから「ええっ、長野まで来てるの!?」と驚かれました。インタビュー時間は、わずか20秒でしたが。

前田 でも、「いい画が撮れましたねえ」とニコニコされていましたよね。

畠山 2時間半かけて行った甲斐がありました。漫遊ですから、そのあと道の駅に隣接した温泉に「20分だけ」と前田さんをお誘いし、さらに側にあった滑り台も「前田さん、滑りましょう」と提案しました。