負担増の子育て世帯が再生産される

さらに言えば、15歳以下の子どもには扶養控除がない。

かつては「年少扶養控除」があり、子ども1人につき所得税で38万円、住民税で33万円を控除できたが、児童手当制度の開始時に廃止されている。年少扶養控除には所得制限はなかったが、児童手当では所得制限が設けられたため、児童手当の所得制限に引っかかれば支給もなく増税もされるダブルパンチ状態になっている。児童手当については先述のように来年から所得制限がなくなるため、現行に比べれば負担は減る見込みではある。

ただ、一連の子育て支援策を俯瞰すると、給付と負担のはざまで揺れ、結果的に負担増のまま子育てを乗り越えざるを得ない子育て世帯が、各世代で再生産されてきたのではないだろうか。

「子育て罰」を可視化する扶養控除制度…親が稼ぐほど子どもが損をする日本の教育費の行く末_3
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今回の扶養控除見直しと児童手当の支給拡大を合わせて考えたとき、実際にいくらプラスになり、いくらマイナスになるのかは給与額や配偶者の収入額、他の所得控除額によって変わるため、一律に述べることは難しい。一方で所得税率は累進課税で高所得者ほど扶養控除による税軽減効果が大きいことから、扶養控除の削減は子育て世帯間での所得格差を是正するとの見方もある。

しかし、アメとムチともいえる政策を同時進行するのは、少子化対策は子育て世帯だけで解決すべき問題だと言わんばかりの印象を与えかねない。いまや出生数が年間80万人を割り、第一次ベビーブーム期の3分の1以下までに激減してしまったわが国で、「異次元の少子化対策」を謳うには、あまりに及び腰と感じてしまう人も多いのではないだろうか。

少子化対策の財源確保には社会保険料の上乗せなどが検討されており、子どものいない世帯との分断を加速させるおそれもある。それは少子化対策のブレーキになりかねず、「異次元の少子化促進対策」といった反発を買うのも無理はない。

拙著『世帯年収1000万円:「勝ち組」家庭の残酷な真実』(新潮社)では、子育て世帯への「子育て罰」ともいえる扶養控除廃止・縮小の変遷を、生活費や教育費など子育て世帯の経済的負担の現状とともにさらに解説している。

取材・文/加藤梨里

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文/加藤梨里