子宮と卵巣を突き刺す細長い針
「この卵子が将来、子どもになるのかも」

いよいよやってきた採卵当日。採卵のための台に寝ると、膣から細長い針を入れられ、子宮に部分麻酔を打たれる。そこから針は卵巣に伸び、「ピー、ピー」と鳴るモニターを見た看護師が「あります」と言うと、医師が針で卵巣にあった卵子を取り出す。

そのたびに卵巣が引っ張られるような感覚と鈍痛がはしるも「我慢、我慢……」と自分に言い聞かせる。自然とお腹に力が入れば、痛みは増すばかり。

「多めに採れてほしいけど、早く終わってほしい……」

採卵は15分間だったが、ひたすら長く感じた。事前に看護師から「生理痛と同じくらいの痛み」と聞いていたが、筆者には生理痛の10倍近い痛みに感じた。

採れた卵子の一部
採れた卵子の一部

採卵後、「採卵できた17個のうち、おそらく5個は未熟」と医師は話したが、個数よりも、今回の費用と2週間分の痛みを無駄にすることなく無事に終わった安心感と、依然残る腹痛が筆者の頭の中を支配していた。

事前に看護師から「みなさん採卵後は、スタスタ歩いて帰っています」と聞いていたが、筆者の場合は歩くたびにお腹がズキズキと痛み、徒歩10分ほどの帰り道が3倍くらいの労力に感じた。3、4日は痛みが残り、在宅勤務で極力動かず過ごした。完全に痛みがひくまでは1週間ほどかかった。

医師からは「卵子が多めに採れたので、卵巣がかなり腫れています」とのこと。このあたりは個人差があり、やってみないとわからない。

後日、医師から「17個のうちの15個が成熟していたので、凍結しました」と説明を受けた。凍結した卵子の写真を見て起きたのは「この卵子から、将来自分の子どもができるかもしれないのか」という、なんとも不思議な感慨だった。

結局、検査から凍結までの費用は66万3000円。さらに保管料として筆者の場合は来年からは年11万円ほどかかる。仮に5年間保管したとして、東京都の助成金を最大限活用できたとしても、計91万円の自己負担は発生する計算になる。予想よりも多めに凍結できたことはうれしいが、金銭的負担は想定を上回ってしまった。

検査や採卵などの自己負担10割の領収書
検査や採卵などの自己負担10割の領収書
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これだけお金をかけ、痛みに耐えても、必ず妊娠できる保証はない。年齢が高くなってからの妊娠・出産はリスクが高まる。「卵子凍結で安心していないで、早く産んだほうがいい」という声もわかる。それでも、自分ひとりではどうにもならないのが、結婚・出産だ。

20代のころは仕事に明け暮れ、現時点では今すぐに結婚・出産する見込みがない筆者にとって、卵子凍結はひとつの選択肢。

また、ふだんあまり意識してこなかった自分の体の中に残る卵子の数、卵巣や子宮の状態も把握したことで、これまでより前向きに仕事やプライベートに向き合えている気がしている。終わってみると「やってよかった」とすっきりしている自分がそこにいた。


取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班