注射と同じくらい、心に刺さったのは…

生理初日にクリニックに行くと、翌日からの自己注射用の薬剤や注射針、飲み薬を渡された。クリニックでは、薬剤を生理食塩水に溶かし、針を付け替えて刺す練習はしたが、本物の薬剤は使わず、やわらかいボールに針を刺しただけ。

ひとりで注射するのは初めての経験で怖かったが、針は細く、看護師さんが言うには「おへその下ならどこでも大丈夫」とのことで、注射は意外と簡単。痛みやお腹の張りはほぼ感じず、数日は肩透かしをくらった気分だった。

しかし、6日後からは注射の種類が変わり、腹痛やお腹の張りといった副作用に苦しめられた。「毎日違うところに刺してください」との看護師の指示に従ったが、素人だからか、刺すところによるのか、同じように刺しているつもりでも、針を刺した瞬間の痛みも日によって違った。針を刺したところが赤くなった日もあった。

接種を終えた注射器はペットボトルに入れ、クリニックに返却する
接種を終えた注射器はペットボトルに入れ、クリニックに返却する

そのうち、「今日もまた痛い思いをしなくてはいけないのか……」と、毎日、朝食後に行う自己注射が憂鬱になってきた。さらに、自己注射が始まってから2回目の診療で医師から言われた「検査結果を見ると、採れる卵子は、おそらく7~14個。もっとたくさん卵子が育ってもいいと思うのですが、体質なんでしょうね……」という言葉が注射と同じくらい、心にグサッと刺さる。

「こんなに痛くてお金もかかってるんだから、もっと育ってくれればいいのに。10個採れても、子どもができるかはわからない。1個でも多く採りたい……」

採卵2日前には「〇時×分と△時□分の2回」と、分単位で注射や点鼻薬の時間が指定された。「これを間違えたり忘れたりすれば、注射をしてきた10日間と、これまでの約15万円が水の泡」と思うと、緊張は最高潮に。
翌日、つまり採卵日前日は何もすることがなく、ホッと安心したのもつかの間、本当の痛みはこの後に待っていた。