少子化なのに親の負担が重い国

ところで、これほどの教育費は、すべて親が自力でまかなっていかねばならないのでしょうか。公的な支援があれば、いくぶんか負担は抑えられるはずです。

しかし、実は子育て世帯への公的な支援は決して十分とは言えません。子どもの教育コストは、社会全体でみると主に税金などの公的資源、親などの家計、そして民間団体や大学の奨学金制度などの私的資源の3つで支えられていますが、日本では長らく家計負担に比重を置く政策が取られてきたためです。特に大学など高等教育の費用は家計負担の割合が52%と高く、これは欧米を中心とした先進国38カ国からなるOECD加盟国の中でワースト5に入ります。

幼稚園から高校まですべて公立でも1000万円超の現実…少子化なのに親の負担が重い国、日本で子どもはぜいたく品なのか?_3
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児童手当や出産手当、育児休業手当など家族関係の社会支出が対GDP比で約2%という数字も、少子化対策に成功したといわれるフランス(2.9%)やスウェーデン(3.4%)に比べて低く、出生率回復の目安とされる3%を下回っています。

2023年に岸田政権は児童手当の所得制限撤廃などを盛り込んだ「異次元の少子化対策」を打ち出し、3兆円規模の予算を投じてこれをスウェーデン並みに引き上げるとしています。東京都では国に先がけ、2024年1月から18歳以下の子どもに月5000円を所得制限なしで給付することを決定してもいます。

しかし、児童手当の所得制限撤廃と同時に所得税の扶養控除廃止も検討されており、子育て世帯への補助は世帯年収1000万円以上になると実質的にはほとんど効果が無いばかりか、むしろ負担増になるとの指摘もあります。