リクルーティングの流れから中央と順天堂の時代がやってくる⁉︎
一方、駒大はこの逆転優勝で再び主導権を握る立場に帰ってきた。
2022年は、前年、主将神林勇太の故障離脱が影響し、4位に終わった青山学院が最高の状態を作り上げて、大会記録を10時間43分42秒にまで更新し、意地を見せた。
私はこの大会を見て、「青山学院は箱根に特化した学校になったな」と感じた。スピードランナーであっても、春先もトラックでのタイムを貪欲に求めず、しっかりとした「地脚」とでも呼ぶべきものを作る。
こうして駒澤と青山学院という、実績抜群の両校が目の上のたんこぶ、というよりも「東西両横綱」という存在になった。
そして、2023年の大会で駒澤が勢いに乗っていることが分かった。2大会前の優勝、そして田澤廉というエースがいることで、佐藤圭汰も入学。久しぶりの優勝が一気に「流れ」を変えたのだ。
2024年の第100回、そしてその先を見据えると、99回大会で上位に入った学校が両横綱に挑戦していくことになるだろう。
現状、総監督になったとはいえ、いまだ駒大の現場で指導にあたる大八木監督と、この10年間でもっとも成功を収めた原監督が倒すべき相手である。
このふたりがいるからこそ、レベルがどんどん上がっている。
2023年は駒大の優勝タイムが10時間47分11秒、2位の中大も10時間48分53秒で、2校が10時間50分切りを達成している。そして11位の東京国際大学までが11時間を切っており、厚底シューズ時代とはいえ、10年前の優勝タイムがシード権獲得ラインとなるまでにレベルが上がったのである。
この高速化時代にあって、両横綱に挑んでいく監督たちのキャラクターは充実している。
完全復活をかける中央の藤原正和監督は、このふたりをなんとしても倒さなければ頂点には手が届かない。國學院大の前田監督にとっても、母校・駒澤を倒さなければ箱根での初優勝にたどりつけない。
そして世代トップのランナーが続々入学している順天堂大学の長門監督も、「選手と監督として優勝」という名誉がかかる。早稲田の花田勝彦監督、城西の櫛部静二監督、そして創価大の榎木監督にも「選手と監督」の二冠のチャンスが、向こう数年のうちに訪れる可能性がある。
特に、リクルーティングの流れを見ていると、2020年代は中央と順天堂の時代がやってくるのではないか──という予感がしてならない。そして優勝したならば、それに引き寄せられる高校生、中学生が出てくる。
注目される藤原監督は1981年生まれ、長門監督は84年生まれ。30、40代の指導者がいよいよメインストリームの時代に入ってきた。それでも──。原監督をはじめ、50代の指導者たちも黙ってはいないだろう。プライド、闘争心を持ち、第一線で指導を続けている監督たちばかりだから。
文/生島 淳
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