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「日本一速い監督」の指導法の変化

――上野監督は指導者になってからも、試合に出場したり、ペースメーカーを務めたりしています。2022年11月26日の日本体育大学長距離競技会では、実業団勢をも破って5000mで13分39秒95の好記録をマークし、日本人トップとなっています。

上野裕一郎(以下、同) 14分を切れたらいいなと思ってスタートしたので、なんであんないいタイムが出たのか、自分でもわからないです。練習はほとんどやっていないので。

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立教大学陸上競技部男子駅伝チームの上野裕一郎監督
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――前日にはMARCH対抗戦でペースメーカーをやっていたので、信じられません。

MARCH対抗戦で筋肉がけっこう張っていたんですけどね。状態は悪くはなかったです。でも、MARCH対抗戦に向けても、何か特別なことをやってきたわけではありません。学生に聞いてもらったらわかりますが、全然練習していないですから。選手と一緒にもあまり走っていません。

――「日本一足が速い監督」などとメディアに紹介されることも多いと思うのですが……。

今は市民ランナーで好きに走っているだけです。選手兼監督って記事に書かれることもありますが、それは間違いで、正しくは監督兼市民ランナーなんです。

――選手と一緒に走りながら、指導されることもあるとのことですが。

気が向いたときに、選手と一緒にラダートレーニングとか、ミニハードル走をやったりすることはありますけど、最近は選手のレベルが高くなってきて、自分たちでやれているから、本練習では僕が引っ張ったり、ついたりはしなくなりましたね。

夏合宿などで、淡々と長い距離を走る練習では、状況を把握するためだったり、大事な練習のペースが乱れないように、一緒に走ることもありましたけどね。

あと、今はスタイルチェンジしていて、部分的に一緒に走ることはあります。変な癖を見つけたときとか、動きが乱れそうなときとか、選手の近くを走ってアドバイスをしています。

走りを指摘しつつ、「そこを修正したら、次の1本が楽になるよ」などと、走りながら声をかけています。1箇所に立ったままだと選手に声を掛けられるのは、せいぜい1、2秒ですよね。でも僕は200m・33秒くらいだったら並走できるので。