ナイキ一強時代か? シューズマーケットの一大転換
駅伝とシューズは、いまや切っても切れないものになった。
2017年にナイキがカーボンファイバープレートを内蔵したいわゆる厚底シューズ、「ヴェイパーフライ4%」を発売すると、一気に選手たちのタイムが伸び、それにともなってナイキユーザーがどんどん増えた。
ユニフォームは別の会社のものであっても、背に腹は代えられない。各大学ともメーカーと交渉しながら、レースではナイキのシューズを履く学校が増えた。
この本の読者には自分で走るコアランナーを想定していないから、厚底シューズの説明をすると、ソールが厚くなったから選手たちが速くなったわけではない。
では、なぜ厚底になったかというと、前方への推進力を持つカーボンファイバープレートを内蔵するために、あれだけの厚みが必要だったと考えて欲しい。
2017年、「プレ・ヴェイパーフライ」の時代には、箱根駅伝のナイキユーザーは36人だった(この年の首位はアシックスで67人)。
ところがヴェイパーフライが発売された後の初の大会となった18年は、ナイキが58人、アシックスが54人と、ナイキがついに第一党の座を奪い取ったのだ。政権交代である。
それが2023年にいたって、ナイキが154人、アディダス28人、アシックス24人という結果になったのだから、5年ほどでマーケットの一大転換が起きたのである。
予選会に出場した全ランナーのシューズ調査
より母数が多い箱根の予選会の方ではどうだろう。『あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド!2023+ニューイヤー駅伝!』(ぴあ)を読んでいて笑ったというか、たまげたのは、2022年10月に開催された予選会に出場した全ランナーのシューズが調査されていたことだ。これはたいへんな労力だし、知識量がものすごい。
やはり、ナイキのヴェイパーフライ、アルファフライが多いのだが、なかにはアディダスの「ADIZERO BOSTON 10」(東京理科大・中山輝)、アシックスの名品「SORTIEMAGIC RP6」(東京工業大・岩井凌真)といったシューズを履いている選手もいた(なんだか選手というより、学生と書いた方がふさわしい気がする)。
これは名品ではあるが、ハーフマラソンの距離に適したシューズとは言い難い。カーボンファイバープレートは内蔵されていないからだ。なぜ、彼らは練習で履くようなシューズを選んだのだろうか?
EKIDEN NEWSの西本さんの読みでは「レースシューズを忘れて、アップ用のシューズを履いて走ったんではないだろうか?」ということだった。もし、本当に忘れていたとしたら、ちょっと笑ってしまうのだが真相はいかに。