同情を誘うような鳴き声にハンターも駆除に抵抗感
なぜここまでキョンが増えたのか? 千葉県環境生活部自然保護課鳥獣対策班はこう答える。
「諸説ありますが、勝浦市の某レジャー施設から脱走したり、2001年の同施設閉園後に放置されていた生き残りのキョンがどんどん増殖したともいわれています。当初は勝浦市といすみ市を中心に生息していましたが、徐々に市原市を含む千葉県南部全域に広がってしまったのです。
県内から野生のキョンの完全駆除を目標にして、毎年8500頭の駆除を目指していますが、人手や予算の関係上、増加数に比べて捕獲が追いついていない状況です」
さらに、キョンは謎が多く、効果的におびき寄せる、いわゆる「誘因物質」も判明していないという。
「一度、シカに効果的だった塩の一種『鉱塩』を使って誘引を試みましたがダメでした。いまだ謎の多い動物で、効果的に捕獲できないというのも増殖を防げない大きな理由です」(同)
鳥獣被害対策班のメンバーで猟師をしながら狩猟体験ツアーを行う合同会社「Hunt+」の代表、石川雄揮氏もキョンの捕獲に苦心する。
「キョンは小型で軽く、そのすばしっこさから市販の罠にはかからないことがほとんど。キョン専用の罠を設置しても、月4、5頭ほど捕獲できるかどうかです」
また、キョンの駆除を嫌がるハンターも少なくない。それには意外な理由があった。
「罠にかかったキョンを止め刺し(捕獲した害獣にとどめをさすこと)する際に、他の動物と違って『ヒィ〜、ヒィ〜!』と赤ちゃんみたいな鳴き声を出すんですよ。仲間に助けを呼んでるみたいなんですけど、私らには同情を誘うかのような悲痛な声に聞こえます。この鳴き声を聞くのを嫌がって『駆除したくない』と言う猟師はけっこういます」
千葉南部に増殖し続け、不気味な鳴き声を響かせるキョン。後編ではついに本腰を入れた千葉県の動きについて取材した。
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取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班