進学校と非進学校の間に存在する、圧倒的な格差
──非進学校から東大に入って、大きく感じたギャップなどはありましたか?
神田 進学校と非進学校では、学力だけでなく精神性や文化資本的な部分も大きく異なります。進学校の人たちって東大を目指すにあたっての覚悟や意思決定をとくに必要としていないのです。普通に生活をしているなかで、東大が選択肢に持ち上がるような教育環境や家庭で過ごしている人が大半だから。
ですが、非進学校出身者は「東大に行きたい」とは普通思いません。なので、東大を目指すにあたって、僕らに比べて大きな覚悟や意思決定がない場合が多いかと思います。そのあたりが根本的に構造として異なるなというのは感 じましたね。
また、東大に入って「すごいな」と思ったのが、進学校出身者は生まれてこのかた、大学進学者ばかりの中で生きているということでした。日本では高卒者のおよそ半分が進学せず就職するのですが、それを統計上の知識としてはわかっていても、実感のない東大生も多いと思います。
──そうした格差は埋められるものなのでしょうか?
神田 難しいと思いますね。僕の場合は高校生活や部活など、青春のすべてを投げ捨てて東大受験に集中しなければなりませんでした。ですが、進学校出身の東大生は勉強以外の才能がある人も多く、ピアノやフランス語、海外留学などいろんなことをしながら普通に東大に入学してくる人も珍しくありません。そもそもの文化資本の違いを感じることもよくありますね。
また、卒業後のキャリアにも大きな差が出ると思います。私たちが高校のころ、頭のいい職業といえば、弁護士や医者、官僚くらいしか思いつきませんでした。ですが、進学校出身者は優秀な先輩も多いので、コンサルタントとか起業家とか、さまざまなキャリアの選択肢を知っているんですよ。こうした差は人生単位で影響を及ぼしたり、将来の道筋を大きく変えたりすると思います。
──では逆に、非進学校出身者の東大生にはどのような強みがあると思われますか?
神田 そうですね。UTFRのメンバーは、高校のころに何らかの強い意思決定を行っています。人生のあるタイミングで「東大を目指そう」という目的を持ち、孤独に負けずに自分が信じるものを貫き通し、自らの道を歩んできた経験を持つ人の集まりだと思っています。
UTFRの「F」はフロンティアという単語なのですが、まさにUTFRのメンバーは自分の設定した目標のために、最前線を乗り越えてきた人たちです。確固たる意思を持って未来やキャリアを切り拓いていく力があると思いますね。これが非進学校出身者の最大の強みだと思います。
清水 そうですね。自分も東大を目指すとなったときにすごく悩みましたし、東大を目指すということ自体恥ずかしいと思うこともありました。ですが、孤独に打ち勝ち「東大へ行くぞ」と覚悟を決めることができたからこそ、今の自分があるんだなという誇りを抱くことができています。
#2へつづく
#2 普通の高校生が東大に入るための条件
取材・文/越前与