行動制限をしてもしなくても流行は起こる

2022年1月頃から新型コロナは、感染力は強いけれども毒性が弱く重症化リスクの低いオミクロン株に置き換わったこともあって、感染症法上の位置付けを「2類相当」から、季節性インフルエンザと同じ「5類」へ引き下げるべきだという意見が与野党からも出た。

それでも感染症の専門家たちや厚生労働省はコロナを感染症5類へ変更する気配すら見せなかった。

感染力の高いオミクロン変異株のBA.5の流行で急激に感染者が増えた2022年7月には、このまま感染者数を全数把握していたら保健所や医療機関が大変だということで、全国知事会などの団体が、2類相当から5類へ格下げするように政府へ要望した。

しかし、「2類では全て公費で自己負担はないが、5類だと通常のインフルエンザ並みの3割負担になる」、「5類にしたら病院に患者が集中して医療従事者が困ることになる」などという専門家の意見で5類への変更は却下され続けた。

「コロナをインフルと同じ扱いにしたら医療が逼迫する」煽り続けた厚労省・医療関係者・マスコミの罪…遅すぎた5類移行がもたらしたもの_3

そして、2022年8月後半頃から感染者が減ったと同時に、世間の関心が統一教会問題へ移ったためか、「2類相当から5類へ」の変更は見送られた。

いよいよ政府が5類へ移行する方針を示した2022年12月末でさえ、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下、専門家会議)」「新型コロナウイルス感染症対策分科会(以下、感染症分科会)」の一員で、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード座長、国立感染症研究所長の脇田隆字氏は、次のように発言し、5類への変更に難色を示した。

「新型コロナが季節性インフルエンザと同様の対応が可能な病気になるにはもうしばらく時間がかかる」

新たな感染症への対策には、科学的なデータを冷静に見ながら臨機応変の対応が必要だ。しかし、日本の感染症対策の司令塔であるはずの厚生労働省と専門家会議は、世界の潮流とは違った方向へ進み、新型コロナの拡大開始から3年が過ぎても迷走を続け、時代遅れの隔離中心の感染症政策を続けた。

新型コロナウイルスは、今後も変異を繰り返すとみられるが、ワクチンや治療薬が開発された今、強毒化して死者が急激に増えることは考えにくい。

日本では感染者が増えるたびに、人の流れが影響するかのように「第○波」という表現をしていたが、2022年末に感染が爆発したにもかかわらず、政府がほとんど行動制限をしなくても年明けから自然に感染者数が減少していった。

つまり、行動制限をしてもしなくても流行は起こる。

世界的に特にアジアでは、冬と夏に大きな流行、そして春にも小さな流行が来る季節性の感染症であることが分かってきた。つまり季節性インフルエンザと同じ対策で問題はない。

私自身、実際に、新型コロナの患者をこれまで多数診療してきたが、特にオミクロン株に置き換わってからは、季節性インフルエンザよりもむしろ症状が軽い人が大半だ。

私が診療をしているクリニックでは、一般的な風邪の患者を診るときと同じようにマスクは着けるが、宇宙服のような防護服などを着用することもなく診察している。