新型コロナワクチンの安全性の評価について
日本ではワクチン接種後、1967人の死亡が確認された、という報道が『日刊ゲンダイ』でなされていました。非常に質の低い「だめ記事」といわざるを得ません(*1)。
前述のように、新型コロナワクチンは国民1人あたり3回以上接種されています。年間、何千万という新型コロナワクチンが接種されています。その一方、日本では毎年100万人以上の方が死亡しています。
であれば、ワクチン接種後に一定数の死亡者が出現するのは、確率的には当然のことです。もし、「ワクチン接種後の死亡がゼロです」と政府が発表すれば、「そんなわけはない」と「陰謀論」を疑うべきですが、想定通り死亡者が出現していることは、確率的には当たり前なのです。
よって、「〇〇後に何人死亡」では、ワクチンの安全性の評価には役に立たないことは明らかです。『日刊ゲンダイ』の記事を「だめ記事」と言うのはそのためです。数字を垂れ流すだけでなく、その「意味」、インプリケーション(含意:表面に現れない含み持つ意味)を論じなければ、優れたジャーナリズムとはいえません。
では、どのようにしてワクチンの安全性を評価したらよいのでしょうか。それは、「比較」です。ワクチンの効果を吟味する際にも「比較」が重要だとお伝えしました。安全性についても同様なのです。
拙著『ワクチンは怖くない』でも、HPVワクチンの安全性を吟味しました。HPVワクチンを接種していない集団と比べて、HPVワクチン接種者に見られたいろいろな症状の頻度は、差がなかったのです。若い女性が不眠や痛みなど、様々な症状を起こすことはあります。ポイントはそこではなく、「ワクチン接種群と非接種群」との比較なのです。もちろん、新型コロナウイルスのワクチンについても考え方は同じです。