日本は重税国家、悪代官経済

田村 具体的な解決策は、財政と金融の両輪をフル稼働させるしかありません。にもかかわらず現実は、財務省主導の緊縮財政路線が岸田政権の基調であり、おまけに将来の増税メニューまで受容しています。

結局、財務省の省是に引きずられていては、景気は上向かないし、少子化も解消するわけがない。

最近の経済と税収の動向を見てみましょう。

景気が上向き、われわれ一般の懐具合がよくなるときに、税の自然増収が起き、民間も政府もともにハッピーとなるというのが、真っ当な国民経済というものです。

国内総生産(GDP)は消費、貯蓄と税収の合計だから、GDPが増えれば税収も増える。日米欧の2022年(日本は年度)の20年前に比べたGDPの増加額に対する政府税収増加額の割合を計算してみると、米国11パーセント、ユーロ圏30パーセントに対し日本は71パーセントにもなります。

税収とGDPの増加率は米国がそれぞれ185パーセント、188パーセントとほぼ並行して増え、ユーロ圏は93パーセント、75パーセントと税収がやや先行しています。ところが日本は税収62パーセント増に対し、GDPは7.3パーセントにとどまっています。

日本はとんでもない重税国家、悪代官経済なのです。財務官僚にはもちろん、岸田政権にはまったくその意識がない。

岸田政権に決定的に欠けているものとは。「異次元の少子化対策」「骨太の方針」…与党内で増税議論を続けたい財務省の思惑どおりの政策_3

石橋 異次元の少子化対策は、2023年1月4日に、岸田さんが伊勢神宮に参拝した際に行った年頭会見で、いきなり言い出したことです。

金屏風を後ろにして、「これ以上放置できない待ったなしの課題」として「異次元の少子化対策に挑戦する」とやったわけです。

そんなことを言い出すとは、自民党執行部さえも知らなかった。

そのときの内閣官房副長官で総理大臣補佐官だった木原誠二さんの振り付けだ、と言われています。彼も、元財務官僚です。

田村 財務官僚的な裏があるということですか。

石橋 そうです。少子化対策は、増税の枠組みをつくるための布石だと、私は思っています。少子化対策には財源が必要ですが、その財源は明示されていません。こども特例国債などの案もいわれていますが、増税につながる策を打ち出してくるでしょうね。

とにかく財務省は常に政府・与党内で増税議論を続けたいのです。続けていればチャンスさえあれば増税できる。

防衛増税はどうも雲行きが怪しい。そこで少子化対策を打ち出したのだと思います。

年数兆円の財源を確保するならば、当然、消費税増税が俎上に載せられます。本当の狙いは、そこにあるはずです。

そもそも、岸田さんが本気で少子化問題を考えているはずがない。

本気で考えているなら、小倉將信さんみたいな初入閣の若手議員を、少子化担当相にするはずがありません。しかも結婚と離婚を繰り返し、子供もいない少子化対策の逆を行っているような人ですよ(笑)。

本気で少子化対策をやろうとすれば、厚生労働省や文部科学省、総務省をはじめとして、あらゆる省庁をまきこんでやらなければならないはずです。

それこそ、複数の閣僚を経験した政調会長くらいの力のある人物を担当大臣に据えなければ、とても達成できるような課題ではありません。