財務省は実態を知られるのを恐れている
石橋 財務省がバランスシートを説明したがらないのは、本当のことがバレたら省是にかかわるからでしょう。財政再建路線は根拠を失い、増税は困難になります。
田村 豊富な資産があることに気付かれ、積極財政派の政治家につけ込まれると、怖がっているはずです。
髙橋さんが政治家に、「外為特会でこれだけ捻出できますよ」と知恵をつけると、「それを出せ」と言われるから困るわけです。いわゆる〝埋蔵金〟です。
どうやって反論しようかと、財務省はただ頭を悩ませています。「すぐに現金化できません」とか、言い訳ばかりしています。
言い訳をしないで、国民を富ませるために活用する方策を考えるのが、本来の国家エリートのはずです。これではせっかくの優秀な頭脳も退化してしまいます。日本の不幸です。
石橋 最近、財務省では主計局長になる前に理財局長(*4)を経験するケースが増えています。言うまでもなく主計局長は事務次官に次ぐポストで、主計局は出世コースです。
*4 財務省の部局のひとつで、国庫、国債・地方債、国有財産管理、貨幣の発行、日本銀行券の発行計画などをおもな業務としている。
一方の理財局は、国有資産を管理する地味なポストで、かつては出世レースから外れた人の「お疲れさんポスト」でした。
それが変わったのは、やはり財務省も、持っている資産をきちんと理解していなければ、財政を語れなくなったからではないでしょうか。実態を隠すにも、まず実態を把握しなければ隠せません。
田村 理財局は国の資産を扱うわけです。財政を語るうえで、かなり重要な存在で、その役割が重視されること自体はよいことです。
そこが軽視されてきた事実には、財政を家計でしか考えられない財務省の退廃が如実に表れています。
文/田村秀男、石橋文登 写真/shutterstock
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