円安傾向で日本はボロ儲けしているはずなのに…

石橋 国家財政を家計に譬えているような官庁に国家経営ができるのでしょうか。財務省が発想を変えないと日本は大変なことになりますね。

田村 企業のバランスシートにあたるのは、国の「連結財務(*2)」のことです。髙橋洋一さんがつくって以来、財務省のホームページにも掲載されています。

*2 単体の企業ではなく、企業グループをひとつの会社と見なしたときの損益計算書や貸借対照表などの財務状況。

といっても、ページを探りに探っていかないと辿り着けなくて、かなりわかりづらい。

資産の部と負債の部があって、資産には金融資産など流動的資産が示されています。そして固定資産には、役人のための官舎とか国有地などが含まれています。

両者を比べると、「なんだ、こんなに国は資産を持っているのか」と驚く。

石橋 わからないように公表するのは後ろめたいからでしょうね。高校生でも、簿記を少しかじっていれば、簡単に財政の状況を理解できます。

田村 以前、熊本の商業高校で講演したときに、「日本の財務状況は、そんなに問題があるわけではありません」と、バランスシート、つまり連結財務の話をしました。

複式簿記を習っている高校生は私の話をすぐに理解できました。

財務省は「赤字だ、赤字だ」と騒ぐけれど、商業高校の生徒にはそんな国家エリートは不勉強だと思われるでしょう。

もっとも、財務官僚は意図的に知らない振りをしているだけかもしれませんが。

「財政を一般の家計感覚でしか考えられない」財務省の退廃が増税の原因!? 円安傾向が強まり為替差益で日本はボロ儲けしているはずなのに…財務省の“埋蔵金”隠しの実態_3

石橋 新聞記者で経済学部や商学部出身は少数派です。理系出身はもっと少ない。だから新聞記者は本当に数字に弱いのです。バランスシートを読めない記者も少なくありません。

記者がその程度のレベルだから、財務省がグラフをふんだんに使った資料をくれると、喜んでそのまま記事化してしまいます。そんな体たらくの記者が、国家財政の現状を的確に指摘できるわけがありません。

田村 外国為替資金特別会計(外為特会)(*3)も、資産としては増えていても、理解できていないから報道できない。

*3 政府が外国為替相場市場で円売り・外貨買い介入を行うための特別会計。財務省が管理している。

ドル高・円安になると、外貨を円に換算すると、ドーンと額が増えます。かなりの余裕資産ができるわけです。

石橋 2022年から円安傾向が強まり、2023年には1ドル=140円台になって、日本は為替差益でボロ儲けしているはずです。

にもかかわらず、財務省は明確な「儲け」は発表しません。外為特会でドルや米国債がどれだけの割合を占めるかも表には出しません。