「スマホの使用時間とメンタルには相関がない」「記憶力と注意力アップ」「肥満対策」…最新研究で判明した知られざるスマホのいい影響
スマホ使用で「集中力が下がる」「うつ病のリスクが上がる」といった悪影響の指摘ばかりが話題になりがちだが、実は最新の科学研究では“いい影響”をもたらすことも判明している。スマホが持っている本当は脳にいい影響を与えることとは?『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』 (朝日新書)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
『脳を活かすスマホ術』#1
知られていない検索のポジティブ面
スマホの良い影響が科学的に解明される一方で、スマホのネガティブな面ばかりが強調されてきたのはここまで述べてきた通りです。
言ってみれば、「ネガティブ洗脳」です。そして、スマホのネガティブ洗脳にはいくつかのパターンが存在してきました。
例えば一つの研究論文を取り上げ、悪い影響を示すところだけに注目し、他をいっさい語らない……。他の部分では良い影響も示されているにもかかわらず。
つまり、悪いところだけ論文から「切り抜き」してネガティブ洗脳していくパターンです。
わかりやすい例に、「グーグルエフェクト」があります。必要な情報はいつでもグーグルを使って検索、つまりググれると思っているので、実際記憶しようとしなくなってしまい、覚えが悪くなる、という主張です。
名前もついているくらいなので、ずいぶん拡散された現象なのですが、実はこれは、根拠となる研究論文の全貌を把握していない言説なのです。
確かに論文中には、ググったもの自体は覚えなくていいと思ったので記憶力が下がったという記述がありますが、一方でそのググったものがどこにあるかという記憶は上がっていたということが明示されています。
つまり、ググったあと、そのページのどのあたりにどんなことが書かれていたのか、といった記憶力は、以前よりもアップしていたのです。
要するに、一部の記憶は下がっていたわけですが、その分上がっているところもあった。記憶しようとするものの対象が変わっただけなのです。
それにもかかわらず、記憶が下がった部分だけを「切り抜き」して注目させることで、記憶力全体が下がってしまったかのような「ネガティブ洗脳」が広がってしまったのです。
文/星 友啓 写真/Shutterstock
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『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』 (朝日新書)
星 友啓 (著)
2023/10/13
¥891
216ページ
ISBN:978-4022952370
「スマホはどんどん使いなさい!」
スマホをポジティブに使いこなす人ほど、
心の三大欲求が満たされていきます!
スマホは使い方次第。
長所を知ってアクティブに使えば、脳のニューロン回路の強化で、記憶力&集中力もアップします。
〈インプット〉に〈エンゲージメント〉、〈ウェルビーイング〉に〈モチベーション〉。
スマホの利点を最大活用するメソッドをご紹介。
世界の最新研究に基づくスマホ活用術のすべて!
(目次より)
【はじめに】
スマホをポジティブに捉えれば自分が変わる
【序章】天国か? 地獄か? スマホの現在地
問題視されるスマホの影響
エコーチェンバーが起きやすいスマホ
ウェルビーイングをもたらすスマホ
パッシブではなくアクティブなツール
スマホのネガティブキャンペーンの現在
スマホでできる脳を活かす習慣 etc.
【第1章】知られざるスマホのパフォーマンス
「スマホは怖い」は本当か
スマホのメンタル影響をメタ分析すれば
スマホで記憶力アップ
肥満対策や注意力アップにもつながる
SNSが孤独を呼ぶ? 孤独がSNSを呼ぶ?
スタンフォードの「スクリーンノム」研究誕生
「あなたは、スマホで何をしていますか」 etc.
【第2章】スマホ動画は「インプット」の無双の鍵
スマホは「読む」「聞く」「見る」の最強ツール
速読の達人が本当にしていること
人間の脳は読むのが苦手
ちょうどいい早送りの速度
マルチメディア時代のインプットとは
動画の習慣で避けるべきこと
「リトリーバル」という万能策 etc.
【第3章】スマホゲームは「エンゲージメント」の最強ツール
アクションゲームはやはりすごい
「21世紀スキル」アップの人気ゲーム
ゲームと学びの垣根が崩れてきた
子どもにはYouTubeよりもスマホゲームを
ゲームが育てる成長マインドセット
ボードゲームか? スマホゲームか?
「52分やって17分休憩」のススメ etc.
【第4章】スマホのSNSで本物の「ウェルビーイング」を手に入れる
SNSで発信するか、受信するか
不特定多数より仲間への発信
内発的なハマりと、外発的なハマりの大きな違い
やっかいな現代の「やる気」事情
心の三大欲求を満たしてくれるSNS
SNSの科学的ハピネス習慣
「感謝の科学」でできるスマホメンタル術 etc.
【第5章】持続可能なスマホの「モチベーション」
「スマホ依存」には医学的定義がない
アメリカでは「PSU」という呼び名も
「ゲーム依存」「スマホ依存」の9条件
幼児期のスマホは厳重注意
テクノロジーと距離を取る三つの方法
スマホが満たす「心の三大欲求」
スマホ時間の理想的な減らし方 etc.