イスラエルの3大情報機関以外にもある潛入スパイ

モサドには、外国での諜報活動を行なう筆頭部局の「ツォメット(対外情報部)」、破壊工作を担当する「カエサリア(特殊作戦部)」、通信傍受・ハッキングを担当する「ケシェト」がある。特徴的なのはカエサリアの隷下に暗殺チーム「キドン」を持つことだ。

キドンはこれまで世界各地でパレスチナ側のテロ実行犯や首謀者を暗殺してきた。近年もキドンの作戦かどうかは不明だが、モサドのカエサリアがイラン国内で核開発計画の要人などを暗殺している。

この「シンベト」と「モサド」、それに国防軍の情報機関(アマン)がイスラエルの3大情報機関だが、それだけではない。テロ対策として隠密に活動するチームが、警察と前出・国境警察にもある。

国境警察(マガブと通称される)は警察組織内の戦闘部隊で、主任務が対テロ作戦だ。活動領域はエルサレムや西岸地区内のイスラエル占領エリアで、前述したようにその中のヤマス特殊部隊はシンベトの指揮下で投入されることも多い。エルサレムや西岸地区での特殊作戦に加え、ミスタービム活動も行なっている。

他にも強力な特殊部隊「ヤマム(特別警察部隊)」もある。主任務は人質救出で、この部隊はこれまでもパレスチナ自治区内の占領エリア内外で数多くの人質奪還に出動している。さらに警察の対テロ特殊部隊「ギデオニム」(第33部隊ともいう)は、イスラエル国内でミスタービム活動を行なっているとみられる。

10月30日、非公開の場所にある「ギデオニム」(第33部隊)を訪問したネタニヤフ首相
10月30日、非公開の場所にある「ギデオニム」(第33部隊)を訪問したネタニヤフ首相
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こうした情報・治安機関系以外に、情報収集を大規模に行なっているのが軍の情報機関だが、対テロ作戦が重要なイスラエルの場合、軍の情報機関は特殊部隊との連携がきわめて多い。その内容に関しては別記事で解説する。

文/黒井文太郎

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