ひきこもりが外に出てくるとき

山田さんに仕事を紹介した代表の女性は、これまで25年に渡ってひきこもりの支援をしてきた。その経験を踏まえて言う。

「山田さんのように、親が何にもしてくれなくて放ったらかしのほうが、意外とひきこもりから出てくるんですね。お父さんが定年退職して家にいるようになって、『働かざる者食うべからず』と言われて家にいたくなくて、ひきこもりから出てきた子もいます。

逆に、ひきこもりの子を心配して手取り足取りお世話して、団体が主催する親会にも来ているお母さんの子どもは全然出てこない。だから、ひきこもりにとっては少し居心地が悪いくらいのほうがいいのかもしれないですね」

とはいえ、厳しく接したり、ほったらかしにすれば誰もがひきこもりから出てくるわけではない。山田さんにしても、以前の状態のままなら、仕事の話を持ち掛けられてもやる気になれなかったかもしれない。

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大事なのは、タイミングと支援者の存在だ。本人が「ひきこもりから出たい」「働きたい」と思ったときに、そっと背中を押してくれる人がいると心強いし、スムーズに進みやすい。

今回は「たまたま」うまくいった面もあるが、ひきこもりから脱するのに遅すぎることはない、年齢は関係ないということがよくわかる。何より山田さんの晴れ晴れした表情を見ていると、こちらまでうれしくなる。

山田さんに初めての給料は何に使ったのかと聞くと、「食べ物に使っちゃった」と控えめに笑う。

「野菜とか果物とか。今は健康オタクなんです。体にいいモノを食べて、家で筋トレして、健康的に痩せたんですよ」

現在、掃除の仕事でもらえるのは月に8,000円だ。自立にはまだ遠いが、ひきこもりから脱するための、大きな一歩を踏み出した。

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(前編)『33年間ひきこもった51歳男性…パニック発作、酒浸り、自宅はゴミ屋敷…「何で自分だけこんな生活をしているんだろう」から解放されるまで』

取材・文/萩原絹代 写真/shutterstock

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7『20年間ひきこもりの男性が小4から100回以上自殺未遂を繰り返したワケ…』
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