「マグロ・パニック!?の巻」(ジャンプ・コミックス第80巻収録)

今回は、丸々と太ったマグロの群れが、大挙して街を大暴走して人々をパニックに陥れるお話をお届けする……といっても何を言っているのかわからないと思うので、ここは黙って本作をお読みいただきたい。
B級映画に登場する海洋生物といえばサメがおなじみだが、マグロが主役のパニックものは本作以外には存在しないだろう(たぶん)。

子どもにはサーモンの方が好まれている、海外でも生魚を食べる習慣が広まって争奪戦に……など、マグロをめぐる状況はあまり芳しい話を聞かないことも多い。だがやはり、マグロといえば握り寿司の王様、人気のネタであることには変わりがない。
しかし江戸で寿司が流行しはじめた江戸時代後期においては、マグロは不人気で、下魚扱いをされていたのだ。もちろん冷蔵設備がないため、生&無加工の寿司ネタが成立しなかった時代ゆえではあるが、ネギと一緒に煮るネギマ鍋の材料程度のポジションだった。
醤油が登場すると、醤油漬けにして傷みを抑える「ヅケ」に加工され、次第に人気の食材となってはいったが、人気№1の寿司ネタになったのは、冷凍設備が普及する1960年代以降だ。

なお本作以降、『こち亀』ではたびたびマグロに関するお話が登場している。
2007年には、作者・秋本治先生の中でマグロブームが到来したのか、「日本まぐろ事情の巻」(ジャンプ・コミックス第157巻収録)「マグロ作りの巻」「2度目マグロ養殖の巻」「またまたマグロ海上決戦の巻」(ジャンプ・コミックス第158巻収録)と、矢継ぎ早にマグロネタが繰り出され、『こち亀』がマグロ三昧となった時期もあった。これらを通して読むと、マグロの種類や部位についての基礎知識から、養殖の難しさ、乱獲問題、漁の厳しさ……などを知ることができ、いっぱしのマグロ通を気取れるようになる……かもしれない。

「またまたマグロ海上決戦の巻」より。この作品では、タイトル通りに両さんと巨大マグロとの激闘が描かれている。ほとんどサメ映画……
「またまたマグロ海上決戦の巻」より。この作品では、タイトル通りに両さんと巨大マグロとの激闘が描かれている。ほとんどサメ映画……

それでは次のページから、前代未聞のマグロ・パニック作品をお楽しみください!!