目撃情報は平年以上「クマの可能性を捨てることができなかった」

県警によると進藤さんは妻と長男(51)の3人暮らしで、妻は同日午前9時半ごろに外出し、3時間半後に帰宅した際に夫が1階寝室で倒れているのを発見して通報。当時、長男は在宅していたという。

現場はJR奥羽本線峰吉川駅から東に約1キロの山間の集落で、普段からツキノワグマの目撃情報もあったことから、大仙市は同日夕に防災メールで「野外にゴミを放置しない」などの注意を呼びかけていた。

進藤藤義さん(93)が血を流して死亡しているのが見つかった自宅(写真/共同通信社)
進藤藤義さん(93)が血を流して死亡しているのが見つかった自宅(写真/共同通信社)
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今回の事件と最近のクマ出没事例について、同市農林整備課の担当者は取材にこう答えた。

「大仙市はクマの出没情報が多く、農作物被害なども深刻です。目撃情報は今日もありましたし、毎日のように寄せられます。今年は平年以上で、県で運用している『クマダス』という目撃情報をマップシステムに落とし込んだものを見ると、一目瞭然です。

当市の場合、クマは一昨年に大量出没したものの、去年はだいぶ減っていたのですが、今年は多いですね。例年ゴールデンウィーク明けくらいから出没し、一昨年は11月ぐらいまで目撃情報が多かったです。

クマも基本的に人間と同じように夜は寝て、日中に活動する動物ですが、目撃情報は朝方が多い印象があります」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

とはいえ、大仙市ではここ数年、人がクマに襲われた事例は確認されていなかったというが…。

「今回の事件は警察や消防が現場確認したところ、結構な広範囲から血痕が見つかり、室内の荒らされ方もひどいのでクマによる可能性を警察に指摘されました。

事件と事故の両面捜査を進めていく中で、市としてはクマによる“犯行”の可能性を考慮して市民に注意喚起をした次第です。

ここら辺は山間部で、クマがもともと住んでいる地域です。そこに国道13号線という主要道路も通っているので、山林から出てきたところをドライバーが目撃するケースも多いんです」

秋の秋田県大仙市の風景(PhotoAC)
秋の秋田県大仙市の風景(PhotoAC)

当初、クマによる被害も想定したことについて大仙署副署長はこう解説した。

「現場に臨場した救急隊員が、クマに襲われた可能性に言及したため、当初は市にも情報共有し、こちらもパトカーでマイクを使って住民に注意喚起をしました。

現場で動物の足跡や毛が見つかったわけではありませんが、やはりクマの可能性を捨てることができなかったのです。

遺体の損傷具合については、コメントを控えますが、司法解剖をした結果、体に凶器で傷つけられた損傷が複数確認できました。獣の爪などによる傷跡ではないことがはっきりしたため、事故の可能性を外して殺人事件として捜査を続けています」