オリジナルも漫画原作もどちらも面白いけれど…

ここまで地上波ドラマの漫画原作ものが増えている件について、あれこれと意見を綴ってみたが、「ドラマはオリジナルが一番なのよ!」という、エゴ全開の思いはない。

漫画原作のドラマは面白い。例えば夏ドラマとして放送された『ばらかもん』(フジテレビ系列・2023年)は、本当に面白かった。

書けなくなった若き書道家が、五島列島で自分を見直して進んでいく物語。放送の最中に「あ、これ原作の漫画があるのか」と気づいたくらいで、まったく気にならなかった。これが漫画原作のあり方ではないだろうか。

また、何人かの脚本家にインタビューをしたときのこと。皆、漫画原作の場合は「何度も何度も繰り返し、原作コミックを読む」と異口同音だった。

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原作の尊厳を崩すことがないように、世界観に入り込む…そんな熱意を持っているのだから、漫画を映像化したドラマは面白い。

要は、オリジナル脚本と原作ありきのドラマの放送本数のバランスだろう。

各テレビ局が今少し漫画原作ものの量に留意する。
加えて、オリジナル脚本は一筋縄ではいかないけれど、長時間をかけて育てる。

この2点を一度見直してはどうだろう。
ひいては、昔のように「待望の映像化!」といった、クリエイターにひとつの目標が宿る。

そんな底力の積み重ねが日本ドラマをきっと盛り上げてくれるはずだ。

文/小林久乃