「慎重な人」と「めんどくさい人」は紙一重
あなたは、「慎重な人」と聞くと、どのような人を想像しますか?
たとえば、家電を選ぶ場面で、商品の仕様や価格、購入者のレビューなど、あらゆる情報を調べ尽くしたうえで、納得のいく商品を購入するという人でしょうか。
あるいは、友人から人間関係の相談を受けると、じっくりと話を聞き状況を理解したうえで、必要な言葉のみを発する人を想像するのではないでしょうか。
一般的なイメージとして、慎重な人は、あらゆる決断が満足のいく結果になるよう合理的で効率的に情報収集し、それらを細心に取捨選択できるという点で、その言動に一目置かれるのかもしれません。
私の周囲にも、そんな慎重派の特性を持つ人がいて、いろいろと教わることがあります。
ちなみに、私自身を振り返ると、慎重な思考は全体の6割程度で、残りの4割は「まいっか」「どうにかなるさ」というざっくりとした思考が占めています。
そんな私が、このような慎重派の特性のある友人たちと一緒にいて楽しいのは、彼らの決断の進め方が明快でスピーディーなところと、相手に対して強要しない柔軟性を持っているからだと感じます。
たとえば、20代のころ会社員時代をともに過ごし、現在も仲良くしている仲間のうち、ソムリエの資格を持っている友人二人とのエピソードがあります。
お酒をまったくといっていいほど飲まない私にとって、ワインリストはまるで暗号が書かれているかのようです。
しかし、彼女たちと一緒に食事をすると、ワインの知識をひけらかすこともなく「珠央には、これがいいね」などと、お酒が苦手な私に飲みやすい乾杯のシャンパンを、二人でさらりと決めてくれます。
ワインのうんちくを語りだしてしまうめんどくさい人
くわえて私が1杯目の飲み物(ノンアルコール)を迷いなく決めたときも、彼女たちは私に合わせてとりあえず1杯目のワインを注文し、2杯目以降はじっくりと選んでいます。慎重にワインを吟味しながらも、私に気を遣わせないように配慮までしてくれるのです。
このようなエピソードを、私と同じくお酒を飲まない別の友人に話したところ、彼女は「うちの会社の部長とまったく逆だわ」と嘆いたのでした。
彼女いわく、その部長はワインに目がなく、知識も豊富だそうですが、会食時にはワイン選びに没頭するあまり、ワインリストを手にしたまま10分近くもうんちくについて話すことがよくあるそうです。
その挙げ句「この赤ワインはとても特別だから」と言って、お酒にあまり強くなく、白ワインのほうが飲みやすいと言っていた男性社員にも、お構いなしに自分の好きな赤ワインをすすめてしまうような強引さもあるようです。
こちらの部長にとって、ワイン選びの時間は、ワインを味わうことと同等の大切な時間であることはわかります。ですから、ワインリストから慎重に考え抜いて選んだ赤ワインには価値があり、最高の味わいだったのでしょう。
けれども、体質に不安がある男性社員を巻き込んでまで、その赤ワインを注文したことに、そこまでの意味があったのでしょうか。
自分の好き放題に知識をひけらかし、自分の決断を押し通すような強引さに、相手がドン引きしていることに気づくこともできないとは、周囲の人たちが気の毒としか言いようがありません。
結局、その部長は会食時になると「慎重な人」ではなく「めんどくさい人」として、有名になってしまったということで、なんだかみょうに納得してしまいました。
繰り返しますが、慎重なことは、合理的で効率的に決断するためのきっかけとしてメリットがあります。ただし、関わっている人たちへの配慮が欠けてしまえば、慎重さを飛び越えて「めんどくさい人」と思われるデメリットがあることも覚えておきたいところです。
「めんどくさい人」は、こだわりが強く、思い込みが激しく、自分勝手で配慮に欠ける無礼な人という印象にもつながりかねません。
せっかく、こだわりがあるほどの素晴らしい情熱や知識を備えているのですから、ぜひ、それらを独りよがりではなく、相手に心地好く感じてもらえるかどうかという視点で、活用していかれたら素敵です。