日本の少子化対策に欠けているもの
’23年6月、岸田首相が具体策や意義を語った「こども未来戦略方針」の要旨は、おもに次の3点から成ります。
(1)若い世代の所得を増やす
(2)社会全体の構造・意識を変える
(3)すべてのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する
(1)の主軸は、若い世代の所得増や賃上げ、雇用の格差是正などです。後ほどご紹介しますが、未婚や出産(子作り)と「収入」「雇用形態」には明確な相関が見られることが分かっており、この部分は一定の評価を得ているようです。
ただし、(2)や(3)については、財源の確保も不明確であるほか、「あくまでも『結婚後』を主体とした対策で、根本的な少子化対策にはならないのではないか」との声も多く上がっています。
なぜなら、日本はフランスやスウェーデンなどのように「婚外子」が5割を超える国とは違い、その割合はわずか2.4%だからです(’20年OECD「Family Database-Share of births outside of marriage」)。
そもそも「結婚」する若者の割合が増えない限り(少なくとも現行の婚姻システムをメインに考えれば)、子どもの数はさほど増えないか、減り続けるでしょう。
社会学者で『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(光文社新書)などの著書もある、中央大学の山田昌弘教授も、「少子化対策では、結婚後より、その手前の『結婚に踏み切れない人』たちへの対処こそが重要」だと言及します。
いわく、いまも結婚した夫婦は平均2人程度の子を産んでおり、結婚を望む未婚者も約8割いる。その半面、結婚を望みながらもなんらかの事情で結婚できない未婚者が大勢いて、「彼らへの支援こそが欠かせない」とのこと。私も同意見です。
まさにZ世代の声にもあった、〝結婚(出産)できる身分〞の人が少ないことが、今日の少子化の根源にあると言えるでしょう。このあと詳しく見ていきます。