「学校に行きたくない」も脳育ての糧
「もう少しだけ頑張りなさい」は、「学校に行きたくない」と子どもが言い出したときにも使われる言葉です。
「子育て科学アクシス」で「ペアレンティング・トレーニング」を学ばれている親御さんで、次のようなケースがありました。
ユカ(小4)はある日、「学校に行きたくない」と言い出しました。
母親は、私たちの理論を学んでいるので、慌てずに、「そうなのね、行きたくないのね」とオウム返しをしました。すると、「うん、担任の先生がいつも怒鳴ってて、その声が怖いの」とユカは休みたい理由を話し始めました。
「いいよ。でも、ズル休みだから、家には一人で置いておけないよ。じゃあ、一緒にお母さんと出かけようか!」と母親はユカを自分の職場に連れて行くことにしました。
母親の同僚はユカも知っている人ばかり。みんなやさしく迎え入れてくれるのですが、最初に必ずみんなから「あれ?ユカちゃん、学校は?」と聞かれます。
ユカは母親に「ズル休みであることを隠さないこと」と約束をしていたので、その度に「今日はズル休みなの」と答えました。仕事が始まると、母親はもちろん、誰もユカの相手をしてくれません。ユカは休憩室の片隅で、一人で絵を描いて過ごすしかありませんでした。
1日が終わり、家に帰ってくると、「明日から学校に行くことにする」とユカ。
「今日1日、とっても退屈だった。先生が嫌いでも、学校に行く方がましな気がしてきた」と続けました。ユカは、1日学校を休むことにより、自分なりに前頭葉を使って考えて、「学校に行きたくない」という問題に対する答えを出したのです。
もし子どもに「学校に行きたくない」と言われたら、そのネガティブな気持ちを親はいったん受け止めて、その上で、「考えるための材料」を与えてみましょう。ユカの場合は、母の職場という普段と異なる環境で一人きりで過ごすことが、「考えるための材料」でした。
どんなトラブルも、脳を成長させる糧です。あくまで答えを出すのは、子ども自身。大人は、子どもに気がつかれないようにさりげなく、その手を差し伸べてあげましょう。
文/成田奈緒子、上岡勇二
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